権威とインテリジェンストラップ
アイデアの作り方
先日「理解の速さと正確さ」というテーマでブログを書きました。その中で「人はだれでも、自分で見聞きするなどして手に入れた情報には価値があると錯覚しますし、人から指摘されない限りは自分が理解している情報が間違っていることには気づかないものです。」とまとめましたが、そういえばこれと近いような言葉があったような、としばらくもやもやしていました。しばらく考えていたのですが思い出せず、数日立ってから車の運転中にふと思い出しました。定番の「アイデアの作り方」をそのまま再現したようで、すこし恥ずかしくなりましたが、なんとか「インテリジェンストラップ」という言葉を思い出したのです。
インテリジェンストラップ
インテリジェンストラップとは、「賢い人は、人並み以上にある種の愚かな思考に陥りやすい」ということを指した言葉です。デビッド・ロブソン氏の著書「The Intelligence Trap」で有名になりました。高名な学者が詐欺に引っかかったり、IQが高い人がアルコールの消費量が多かったりなど、優れた知性と優れた思考力とは異なる、ということをいろいろな例を挙げながら紹介しています。
自分を疑う力
立派な経歴をもつ人、知性的だと言われている人ほど、「自らの意見や判断を正当化するためのテクニック」を身につけています。そして、自分を疑う力を失い、間違いを修正することができず、より間違った方向に進んでしまう、というのです。たしかに、自身の経験の中でも、そのような場面を多く見てきました。プロジェクトの進捗が滞っている責任を自分以外に押し付けるために嘘をつき続ける事業部長、社員の採用にもマネジメントにも失敗しているのをうまく正当化してやりすごす経営者、問題解決を自分の専門分野になぞらえてしかしようとしない研究者、契約を破棄したいためにあることないこと文句をつけはじめる社長、などです。普通に接している間は「仕事ができる人」や「賢い人」であるにもかかわらず、彼ら/彼女らが想定したストーリーから外れる自体に直面した時、それに対処する方法が嘘などの真っ当ではない手段になってしまうのです。
権威を保つために
もちろん、彼ら/彼女らを尊敬している人や、その人を中心とした経済圏の中で生活を立てている人もいるので、その人達のために(もちろん自分のためにも)自分の権威を維持するべく、自らインテリジェンストラップに落ちていく人もいます。それは、事情を知っている第三者からみると、とても悲しく、切ないものです。コミュニティや人間関係の維持には「権威」が必要な場面も少なくないとは思いますが、前述の「悲しいインテリジェンストラップ」に陥る必要がないように、普段から謙虚に、自分を疑う力を持ち続けていたいと思いました。日本には「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という、素晴らしいことわざもありますね。
記事タイトル | 権威とインテリジェンストラップ |
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掲載日 | 2024年7月13日 |
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