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収斂進化

収斂進化とは

「収斂進化」という言葉があります。「収斂(しゅうれん)」には「縮むこと」の意味もありますが、ここでは「収束すること」の意味です。収斂進化とは、祖先が異なる生物であるにも関わらず、環境などに共通点が多いと似たような形態や機能を獲得することを指します。たとえば、哺乳類であるイルカと魚類であるサメは、水中で生活することや魚を餌としていることを共通点としており、その結果としてよく似た形になっています。また爬虫類である翼竜、哺乳類であるコウモリ、そして鳥類は、祖先が異なりますがいずれも翼を持つという進化を遂げています。

器官が異なるのに機能が同じ

前述のコウモリのハネは前足が変化したものですが、トンボやチョウなどの昆虫のハネはもともとは皮膚の突起物のようなものだそうです。元になった器官が異なるのに同じ機能をもつようになったことは、非常に興味深いです。徐々にハネに変化したのか、突然変異でハネを獲得したのかはわかりませんが、果てしない時間の流れと生物の営みの奥深さを感じずにはいられません。なお、このように違う器官であるにもかかわらず、機能が同様の器官同士を「相似器官」と呼ぶそうです。

人の知能と人工知能

田口善弘著「知能とはなにか ヒトとAIのあいだ(講談社)」では、「知能とはなにか」という、現在もはっきりとした答えの出ない問題についての考察を通じて、現在の爆発的な生成AIブームに至る技術や歴史をわかりやすく説明しています。その中で、「人間の脳」と「生成AI」は、いずれも「現実シミュレーター」であり、それぞれ異なる原理と異なる限界とを持っている、と説明していました。これを読んだときに「収斂進化」という言葉が頭に浮かんだのです。

第3の知能

人間の脳も、昨今の人工知能も、それぞれが異なる仕組みで「知能がある」と感じる受け答えを可能にしています。また、人間の脳は細胞からできていますし、人工知能は機械です。このように情報をかいつまんでみると、先ほど説明した収斂進化の例として加えても良い気がしませんか。そして、相似器官であるハネを持ち、空を飛ぶ生き物が複数登場したことを考えると、この先人間でもコンピューターでもない「第3の知能」が誕生することも予測できそうです。

記事タイトル収斂進化
掲載日2025年6月21日
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