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「空気を読む」から「空気を作る」へ

選手だけが主役ではない

お笑いコンビ「オードリー」がMCを務めるNHKのドキュメンタリー番組「100カメ」が、川崎フロンターレ(Jリーグの強豪チーム)の試合の舞台裏に密着した回の放送を観ました。このときの「100カメ」(100台のカメラ)が捉えた映像は、試合中のフロンターレの選手ではなく、チームを運営する人々の慌ただしい動きや、応援するサポーターの様子をつまびらかにしていました。印象的だったのは、フロンターレの運営陣とサポーターの代表(いつも太鼓を叩いたり、巨大なフラッグを振るなどして一体感のある応援をしてくれる人たち)とが、無線で密に連携をとっていたことでした。サポーターの代表者は、選手交代のタイミングなどを運営側から教えてもらいながら、選手やスタジアム全体を盛り上げる応援を繰り広げていたのです。

「鼓舞する人」

お笑いコンビ「さらば青春の光」のネタの1つに、予備校の教室を舞台にしたコントがあります。教壇に立つ講師とは別の、頭に鉢巻を巻きメガネをかけた堅物風の男が、タイミングを見計らいながら教室に乱入してきて、騒がしい生徒たちを注意し、説教を繰り広げては去っていく、というくだりが繰り返される展開です。テレビでも活躍中の予備校の人気講師、林修先生の「いつやるの?今でしょ!」というフレーズがありますが、あれは林先生の行う授業が長年高く評価されているから決め台詞として成立しています。それをふまえてかどうかは分かりませんが、このコントでは「予備校に勤めてはいるけれど先生でも何でもない男性に決め台詞だけ言わせる」という滑稽さを描いていました。鉢巻乱入男に「お前ら、このままやと社会の底辺や!」みたいなことを怒鳴られて、「一体、あれは誰なんだ」とざわつく生徒に、講師は「あれは鼓舞する人や」と説明します。

リーダーの資質、あるいは素養

このコントのように、明確に「鼓舞する人」と名付けられたり、それを専門の仕事としている人はいない気がします。けれども、「100カメ」で観た川崎フロンターレのサポーター代表のように、選手だけでなく応援するファンをも応援する、その場を「鼓舞する人」は案外どこにでもにいて、さまざまな場面で多くの人のパフォーマンスを上げているのかも知れない、と思いました。「鼓舞する人」の能力は、なかなか数値化できませんが、実は組織やコミュニティの運営において重要です。前述の「鼓舞する人」のように、他の能力が伴わずに口だけ達者なだけでは説得力がありませんが、逆にただ優秀なだけでもリーダーシップを発揮することは難しいのも事実です。

空気を作る

自分がリーダーのポジションに就くような人材でなくても、あるいはプレーヤーとしては優秀なのにリーダーとして上手く立ち回れていなくても、そのチームで「鼓舞する人」の役割を果たしたり、「鼓舞する人」を見つけてきて配置したりすれば、チームがチームとして機能して、良い成果を上げられる可能性は高くなります。日本人の空気を読む性質は、チームワークを向上させる点で海外で評価される一方で、忖度が過ぎると問題視もされます。そこで「空気を読む」段階で留まらずに、「空気を作る」ことを目指してみるのはどうでしょうか。川崎フロンターレの「100カメ」での決め台詞は、当然「今でしょ!」ではなく、「空気、作ってこぉーぜー!!」でした。

記事タイトル「空気を読む」から「空気を作る」へ
掲載日2023年8月12日
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