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楽をするのは悪いこと?

「楽をする」のは悪いこと?

日本人にとって、「楽をする」ことはちょっと悪いことのように捉えられがちですが、必ずしもそうとは限りません。「楽をする」は、角度を変えれば「効率よくする」とも表現できるからです。もちろん、効率化だけを目的にして物事を進めていくと必ず歪みが生じますが、楽をする方法を獲得することは、歴史の中では「技術革新」とか「進化」「進歩」と呼ばれてきました。

効率化して何をするのか

仕事でもプライベートでも、何かを効率化して1つの作業から解放されるならば、効率化すべきだと私は考えます。作業から解放されれば、時間だけでなく気持ちにも余裕が生まれて、「新たな何か」を得られるからです。「新たな何か」については、単純に「ゆっくりできる」、つまり余暇を手に入れるだけでも十分に意味があると思いますが、もう少し立派なことを言えば、効率化できない仕事に着手できるようになるという点で、大いに意義があります。

「楽をする」のは全然「楽」じゃない

実は「楽をする」方法の獲得は、効率化するのがかなり難しいようです。例えば、2023年5月のサミットでも取り上げられた「ChatGPT(以下、チャットGPT)」に代表される「生成AI」の開発は、専門的な知識を持たない人間でも「楽ではなかったんだろうな」と想像できます。私たちは楽をするために多くの時間や労力を投じて、その方法を獲得していると考えると、何だか皮肉な気もしてきます。けれども効率化して手に入れた「新たな時間」を何に使うのかの選択権は、私たちにある程度委ねられているのも事実です。

適材適所

全自動洗濯機を前にして、「乾燥までできるとか言っても、まあまあ手間はかかるけどな」と愚痴をこぼしたくもなっても、たらいに水を溜めて洗濯物を手洗いすることと比べれば、明らかに「楽」になっていますし、その場を離れて他のこともできます。洗濯機に任せる仕事は、洗濯と決まっていますが、前述の「チャットGPT」には何を任せれば、本当の意味で「楽をする」ことができるでしょうか?

「楽をする道具」の使い道

「チャットGPT」を始めとする「生成AI」は、便利なツールであるぶん、悪用を防ぐことも含めてその使用にきちんとしたルールが必要です。実際、運用に関する国際的な基準はこれから次々に定まっていくでしょう。そのルールの範囲内で、どのような使い方が適切で効果的なのかを考えていくことは、やはり「楽」ではありません。「チャットGPT」に、「チャットGPTに何を任せればいい?」と尋ねれば回答してくれるでしょう。でも、そのような「新たな」仕事(任務)を作り出すことこそ、私たち人間が担うことではないかと感じています。

記事タイトル楽をするのは悪いこと?
掲載日2023年6月17日
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