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再利用性のある文章の書き方

文章の再利用性とは

「再利用性」とは、主にIT業界で使用される言葉です。ソフトウェアの開発において、何らかの形で既存の資産を使用すること、あるいはそのしやすさのことを指します。資産の再利用性が高くなると、効率や生産性の向上や、回収できる利益の増加に直結するため、その追求はIT業界以外でも取り組まれています。

文章を書くときに、その再利用性を意識したことがある人はそれほど多くないようです。メールの雛形をつくることも文章の再利用のかたちですし、SNSの絵文字やスタンプも見方によっては文章の再利用といえるかもしれません。意識する、しないにかかわらず、文章の再利用は行われています。

一般的に、手書きの文章は再利用性が低く、パソコンやスマホで作成した文章は相対的に再利用性が高くなります。

本稿では、「伝わりやすさ」と「視覚的な見やすさ」に加えて、「再利用性」を考慮した文書を書く際に気をつけるべきポイントについてまとめました。

構造を整える

構造が整えられた文章は、再利用性が高いといえます。

階層構造と見出し

文章に階層構造を設ける
文章を内容ごとにまとめ、階層構造を設けます。
適切に小見出しをつける
階層ごとに適切な小見出しをつけることで、文書の構造や内容を理解する補助となります。

テキストを整える

「文章の書き方」は多くの方が独学で身につけています。アナログで文章を書くことは少なくなりましたが、デジタルならではの文章の書き方は意識しなければ身につきません。特に、普段文章を読む習慣の無い方や、学生時代にWordを使いはじめて、なんとなくそのまま使っている方は、テキストの書き方についてチェックしてみてください。

全角、半角

英数字は原則半角で表記する
英数字を半角で表記することはコンピューターでテキストを書く上の基本ですが、慣習などにより遵守できていない場合も多いようです。
例)1,250円→1,250円
半角カナを使用しない
特定のデバイスで多用される半角カナは、他のデバイスで閲覧する可能性のある文書では使用しない方が良いです。
例)ハンカクカナ→ハンカクカナ
記号は全角で表記する
日本語文章中では「?」「!」「&」「<」などの記号を全角で表記します。いずれも半角にすると、コンピューター上でプログラム的に意味のある記号として認識されることがあります。
例)発売中!→発売中!
全角スペースを使用しない
これは絶対ではありませんが、全角スペースは半角スペースで代用したほうが良いケースが多いです。
例)山田 太郎→山田 太郎
名前の区切りのルールを統一する
姓や名が一文字の名前や、外国人の名前のことも考慮しながら、区切りのルールを統一しましょう。
例)山田 太郎、鈴木花、佐藤 一郎、ジョンスミス→山田 太郎、鈴木 花、佐藤 一郎、ジョン・スミス

括弧

二重かぎ括弧はかぎ括弧の中で使用する
目立たせるために二重かぎ括弧を単独で用いるのは避けましょう。
例)「この『魔法の本』を持ち出せばいい」
丸括弧は全角で書く
日本語文章中で半角括弧を使用した際に、前後に半角スペースで余白を設けているのをよく目にします。全角括弧を使用すると、余白が適切に施された読みやすい文章になります。
例)CD(コンパクトディスク)→CD(コンパクトディスク)
使用する括弧の種類は少なめに
ひとつの文章中に沢山の種類の括弧を用いると、括弧の使用方法のルールにばらつきが生じ、強調の効果もぼやける。使用する括弧の種類は3つ程度に止め、効果的に用いましょう。下記「参考:括弧の使用例」をあわせてご参考ください。
例)「」『』()【】[]《》{}→「」()

参考:括弧の使用例

種類呼び方用途
「」かぎ括弧会話、引用、固有名詞、慣用句、強調
『』二重かぎ括弧書名、「」内で用いる
()丸括弧補足、注記、読みがな、外国語、省略
[]大括弧見出し、引用、参照、強調
【】隅付き括弧見出し、注記、強調
〈〉山括弧強調
“”ダブルクォーテーション外国の書名、外国語、強調
‘’シングルクォーテーション強調

日時

日時には西暦を書き添える
文書は将来的にも読まれる可能性があります。日時には和暦、もしくは西暦を書き添えましょう。なお、和暦は生年月日以外では西暦に置き換えたほうが便利です。
例)2月4日開催!→2020年2月4日開催!
西暦は4桁で書く
西暦は2桁で表記することもできるが、できる限り4桁で表記しましょう。
例)02年に開催されたワールドカップ→2002年に開催されたワールドカップ
曜日を書き添える
曜日を書き添えることで、西暦がなくとも日時を特定するヒントになります。
例)11月2日→11月2日(金)
年月日の書式を揃える
少なくともひとつの文書の中では年月日の書式を揃えましょう。
例)2012/01/11、2012年1月11日、2012.01.11→2012年1月11日

外国語の表記

大文字、小文字のルールを決める
特に固有名詞では大文字、小文字を指定しているものがあるので注意しましょう。
例)word、EXCEL、iphone→Word、Excel、iPhone
カタカナ表記ができるものはカタカナで表記する
それほど馴染みのない言葉を無理にカタカナ表記をすると「表記のゆらぎ」という別の問題が起こる可能性がありますが、一般的に使用されているカタカナ表記がある場合はそれを用います。
例)LOGIN→ログイン
スペースの有無を統一
固有名詞では、単語間にスペースを設けていないものもたくさんみられます。
例)Word Press→WordPress
中黒の有無を統一
中黒は単語の区切りに用いられることが多く、その使用方法は文書の中で統一しましょう。
例)ジョンレノン→ジョン・レノン
語尾の長音のルールを統一する
語尾の長音の有無は業界ごとにルールがあったり、時代によって変遷しています。
例)コンピュータ、サーバ→コンピューター、サーバー

記号

中黒は区切りに使わない
同格の情報を並列するときに中黒を用いないようにしましょう。
例)ジョン・レノン・リンゴ・スターなど→ジョン・レノン、リンゴ・スターなど
三点リーダーを使用する
「余韻」や「沈黙」を表すのに中黒や句読点を使用しない。
例)嘘じゃなかった・・・→嘘じゃなかった……
絵文字、アスキーアートを使用しない
意図する表示ができない環境が多い絵文字やアスキーアートは、広く読まれる可能性のある文書ではできる限り使用しないほうが良いです。

使いやすさを整える

ユーザビリティ

機種依存文字を使用しない
用いる記号が機種依存文字かどうか疑う習慣をつけましょう。
例)㈱、〠→(株)、〒
指示語を使わない
指示語(「こちら」や「左の」など)は再利用した際に環境が異なることもあるので、できるかぎり使わないようにしましょう。
例)こちらを参照→環境省のホームページを参照
テキストの全角スペースやタブなどで見た目を調整しない
スペースを用いると、違う意味の言葉として認識されます。見た目は他の方法で調整しましょう。
例)凡 例→凡例

まとめ

再利用できる文書の書き方のポイントは以下の5つです。

  • 文書の構造を意識する
  • 文書中で書式を統一する
  • 単語や文章の「意味の区切り」を保持する
  • スペースなどで見た目を調整しない
  • 他人(未来の自分を含む)にも伝わるように書く
記事タイトル再利用性のある文章の書き方
掲載日2023年8月26日
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