ポストトゥルース
真実はいつもひとつ!
「真実はいつもひとつ!」は漫画やアニメで人気の「名探偵コナン」の主人公、江戸川コナンの決め台詞です。どんなに犯人が嘘をついたとしても、実際に起こったことはひとつなので、自分がそれを解き明かせてみせる、という意気込みを表したセリフです。一方で、同じ漫画である「ミステリという勿れ」では、主人公である久能整は「真実は人の数だけある」としています。「真実は一つなんだからな」と言われた久能は、「ドラマみたいなセリフをほんとうに言う人がいるなんて」と驚いてさえ見せます。そして、「真実は人の数だけある」と述べ、「でも事実は一つです」と続けるのです。
真実と事実
これを受けてかどうかはわかりませんが、「真実」と「事実」という言葉がどう違うのか、気になっている人は多いようです。多くの人が調べてまとめた投稿やブログなどをみると、真実とは「うそいつわりない、本当のこと」で、事実とは「現実に起こったり、そんざいしたりすること」だそうです。加えて、真実には主観が入っても良いらしく、一方で事実からは主観を取り除かなければいけない、という解釈をしている人が多いようです。どうも無理やり区別するための解釈のような気もしますが、とりあえずこれを前提としましょう。
ポストトゥルース
「ポストトゥルース」という言葉があります。日本語では「ポスト真実の政治」や「ポスト真実」などと訳されます。これだけでは何のことかわかりませんが、「客観的に見れば真実だが事実ではないこと」というような意味で使われることが多いようです。特に、政治を論評するときに用いられ、政策や事実よりも個人の信条や気持ちが重視され、それに基づいて世論が形成されること、という説明がされます。これをみて、2016年のアメリカ大統領選挙や、同じく2016年に行われたイギリスのEU離脱を問うた国民投票を思い出す人も多いのではないでしょうか。そして、2024年の兵庫県知事選に思い至る方もおられるかもしれません。
ポストトゥルースの萌芽
以前「権威とインテリジェンストラップ」というブログの中で、「立派な経歴をもつ人、知性的だと言われている人ほど、『自らの意見や判断を正当化するためのテクニック』を身につけています。」と書きました。インテリジェンストラップにより形成された真実は、本人から見て絶対なので、それを守るために意固地になったり他者を攻撃してしまったりすることがあるのも容易に想像できます。そして、これがポストトゥルースの最初の一歩になるのではないか、と思いました。
事実は真実よりも重要か
ここまで書いた文脈では、「真実よりも事実を大切にしましょう」という結びになりそうですが、事実よりも多くの方が望む真実のほうが重要視されるのが現実なのではないでしょうか。政治でも、仕事でも、個人同士の会話の中でも、インテリジェンストラップやポストトゥルースの罠は潜んでいます。時間をかけて考えて出した結論や、多数決で得られた結果が、事実に基づいていない場合もあるのです。そして、それを良しとして進められてきた社会が、どうやら限界を迎えている可能性がありそうです。この時代において、我々にできることは、きちんと考えることと、そしてきちんと考えたのにうまくいかないのであれば、次に正しいと思われる道に軌道修正ができるようにすること、これしか無いかもしれません。
記事タイトル | ポストトゥルース |
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掲載日 | 2025年1月18日 |
カテゴリー | ブログ |
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