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留学生が自分では決めない理由

自分では決めない、決められない留学生

日本で学ぶ留学生、特にアジア出身の学生と接する中で、「自分で何かを決めること」を避ける傾向があるように感じました。この傾向は、私の経験上、南アジアの学生>東南アジアの学生>東アジアの学生の順で強いという印象です。この体感的な傾向を学校関係者や在留外国人との接触機会が多い方々と共有したところ、同様の認識を持つ方が多いことがわかりました。この現象の背景には、主に以下の3つの要素が原因になっていると考えられます。

1:文化的な要因

第一に、集団主義的な文化の影響が挙げられます。個人主義よりも集団や相互依存を重んじる文化圏では、自分の意見よりも家族やコミュニティの意見、あるいは期待を優先することが美徳とされます。また、年長者や権威者への敬意を重んじる文化も意思決定に影響を与えます。これは日本社会にも存在する傾向ですが、それらがより強く作用している状態であると推察されます。

2:教育システムの要因

第二に、教育システムの違いです。学生時代に厳しい受験競争を経験していると、知識のインプットに重点を置いた教育に偏重し、自ら課題を設定したり、批判的思考(クリティカルシンキング)に基づいて独自の判断したりする機会が失われている場合があります。その結果、留学先やアルバイト先で求められる主体的な学習や意思決定に対して苦手意識を持つことにつながっているようです。日本でも知識偏重の教育が議論される際に「他山の石」とすべき内容でもあります。

3:経験(環境)の要因

第三に、在留外国人特有のストレスによるものです。未熟な言語力、限られた仲間、そして学業とアルバイトの両立といった状況は、留学生にとって相当な心理的/物理的ストレスとなります。このようなストレス下では、思考や判断にかかる認知負荷を軽減するため、自らリスクを冒して判断するよりも、他者の指示や明確なルールを待つ行動が増えると考えられます。これは、一般の日本人学生にはあまり見られない、留学生の置かれた特殊な環境要因と言えます。

世代特性なのか

この傾向が、インターネットや生成AIの普及により「容易に正確な情報が得られるようになった世代」特有のものではないかという可能性も検証しました。しかし、同世代の日本人学生にヒアリングを行ったところ、彼らには同様の傾向は見られませんでした。むしろ、彼らは自己の意見を明確に表明する訓練を受けており、日本の「和」を重んじる文化が染み付いた世代からみれば、こちらの意図とは異なる方向でも主体性を発揮することがあり面食らうほどです。

留学生と接する上での日本側の責任

日本人学生が自己主張をしっかりと行うからといって、比較的「御しやすい」留学生に過度な負担や不合理な指示をすることは、教育的にも倫理的にも避けるべきです。日本での経験を積み重ねるにつれ、留学生もやがて「自分の意見」を持つようになり、それを表明することで自身の幸福を模索し始めます。したがって、今後、留学生を指導する教員や雇用する経営者には、彼らの将来的な成長と幸福を考慮し、安心して意見を言える環境を整えることと、そして自律的な意思決定を促す適切な関わり方とが求められます。

記事タイトル留学生が自分では決めない理由
掲載日2026年1月3日
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