新しくて難しいこと、古くて簡単なこと
書店にて
書店では、「今売れている本」や「最近話題の本」を集めた書棚を見るのが好きです。そこにはドラマ化やアニメ化された物語の原作小説や、人気アイドルの写真集、料理研究家のレシピ本などもありますが、自己啓発系の本も数多く見られます。自己啓発といってもその内容は多岐にわたります。時間の使い方について、組織のマネジメントについて、生きていく上のルール、より良いコミュニケーションの取り方、などです。また、よく耳にするけれどいまいちピンとこない、難解なキーワードをテーマに、解説したり実践したりしている本もたくさんあります。2023年から2024年にかけては、メタバース、生成AI、新NISA、Web3、パレスチナ問題などでしょうか。
「最新」の難しさ
最新の考え方や最新のキーワードが並んでいるのをみると、すごく良いものに出会えた気がしてワクワクします。自分がまだ知らない知識、まだ試したことのない手法が書かれているかもしれない、という期待がそうさせているようです。同時に、すでに誰かがこれらの知識や情報を使ってうまくやっているのでは、という焦りも感じます。そんな焦りに背中を押されて本を手に取り、時間を見つけて読み終えると、ちょっとした達成感を得られ、未来への可能性に胸が膨らんだりもします。しかし、最新の本を読んで獲得した知識や手法を活かせたり、効果を発揮させたりすることはほとんどないように思います。大抵の場合、自分が取り組む前にブームが過ぎ去り、次のバズワードを提示され、徒労感に苛まれることになるはずです。
実践が難しい理由
「最新」のものの実践が難しい理由はいくつか考えられます。ひとつ目の理由は「今の自分にはふさわしくない知識や手法だから」です。タイミング、環境、前提、嗜好など、少しでもズレている場合、本を読んでいる最中からどうもしっくりきていないはずです。そして、それを実践しようにも、実践できる場所や機会がみつからず、頭を抱えることになるのです。
難しいから難しい
ふたつ目の理由は「すごく難しいことだから」です。現代の社会は非常に洗練されており、その中で取り上げられる「最新」の考え方ややり方は、とてつもなく頭の良い人たちが、すごく多くのお金と期間を使って作り上げてきたものです。私を含め、普通に生活している人々がそれらを利用したり再現しようとしたりしても、難しいのは当然です。
古くて簡単なこと
どうやら、「新しくて難しいこと」をすぐに取り組むことは、それほど簡単ではなさそうです。それでは、少しでも自分を向上したり、よりよい方法を身に着けたい場合はどうすればよいのでしょうか。答えはとてもシンプルで、若干言葉遊びのようにも聞こえますが、「新しくて難しいこと」が無理ならば「古くて簡単なこと」に取り組めばよいのです。
誰でもできて、誰にでも当てはまること
「古くて簡単なこと」は、たとえば次のようなものです。あいさつをすること、お礼を言うこと、遅刻をしないこと、報告/連絡/相談をきちんとすること、ルールを守ること、などです。これらは、誰でもできるし、誰にでも当てはまるけれど、みんなが十分にやっているわけでも、みんながきちんとできているわけではないことばかりです。これらをきちんとするだけで、自己啓発もできますし、他者との協働やコミュニケーションもうまくいくはずです。なにより、今日から始められるし、短時間で効果が現れるはずです。
銀の弾丸は存在しない
最新のツールを使ったからといって、うまくいくとは限りません。軽薄に最新のものにすがるまえに、できることがあるはずです。問題解決や自己啓発に銀の弾丸はありません。まずは良いとされていることに真摯に取り組むところから始めるのが何よりの近道だと思います。
記事タイトル | 新しくて難しいこと、古くて簡単なこと |
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掲載日 | 2024年1月27日 |
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