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理論と実践

自分でやるのは難しい

数年前、とある小学校で高学年を対象に、国語の授業を行う機会に恵まれました。こちらとしては要約作文を書かせたり、物語の主題を考えさせたりしたいのですが、いざ作文や文章を書かせようとすると、ちゃんと取り組む子と、好き勝手に立ち歩きここぞとばかりに遊ぼうとする子が入り乱れて、教室は一気にカオスと化します。先生が話している間は「授業」だと捉えて真面目に聞いていられても、自分で作業するターンになると休み時間と同じに思えてしまうのでしょう。仕方がないのでクラス全体で考える時間を増やし、勉強とは関係なさそうでいて実は関連するような雑談などしながら、集中力を要する各々が作業に向き合う時間は、できるだけ限定するようにしました。そのような学級崩壊を招かないための努力と工夫は、小学校の先生なら毎日、毎授業、欠かさずにされていることなのだろうと想像し、改めて敬服しました。

魔改造の夜

小学校での雑談では、「魔改造の夜」というNHKの番組を紹介したことがあります。当時は、BS放送のみでしたが、2023年からは地上波でも見られるようになりました。何が「魔改造」なのかと言うと、多くの人にとって見覚えのある市販の「おもちゃ」や「家電製品」をモンスターマシンに改造するのです。これまで番組では、「ワン、ワン、ワンッ」と鳴いて少しだけ動いて見せるレトロな「犬のおもちゃ」を改造し疾走させて、25m走のタイムを競う企画がありました。その改造に挑戦したのは、東京大学工学部やトヨタ、そしてドラマ「下町ロケット」に出てきそうな傑出した技術力を持つ町工場の星野製作所でした。「魔改造の夜」は、他の放送回も含めて毎回、超一流の組織が参加しています。日本のトップに君臨するような学校や企業が、それぞれの持つ科学の知識や技術を駆使して「ワンちゃん25m走」に臨む様子は、かつての人気番組「プロジェクトX」を彷彿とさせるものがあり、競技の本番以上に改造の過程が何より見どころです。

トライ&エラーの重要性

ぬいぐるみを走らせたり、お掃除ロボットに走り幅跳びをさせたりと、「そんな馬鹿らしいことして何になる」と思う人もいるはずです。しかし「そんな馬鹿らしいこと」でさえ実現させるまでには、多くのアイデアを洗い出し、実行可能なものに絞り込み、改造ができたところからテストを繰り返す必要があります。知識があっても経験があっても簡単には上手くいかない、ものづくりのリアルを教えてくれる素晴らしい番組だと感じています。また、「魔改造」は非常にタイトな予算とスケジュール(期限)の中で行われるため、リハーサルでは好成績を出せていたマシンも、本番では動かずに失格となるケースも少なくありません。優秀な人たちが苦悩し苦心して「ワンちゃん25m走」を競い、ときに悔し涙を流し、ときに仲間と抱き合って讃えあう様子は、まさに緊張と緩和が同時に存在する極上のエンタメ作品でもあります。

やってみなくちゃ分からない

以前、このブログでも取り上げた「クリティカルシンキング(批判的思考)」は、常識や自分の考えも含めて、いったん疑ってみる思考法です。「ロジカルシンキング(論理的思考)」だけでは上手くいかない場面が多々あるため注目されているものですが、「論理的思考」が常識や公式や数式などの「理論」であるならば、「批判的思考」はまさに「実践」から生まれやすいかも知れません。「魔改造」において、試作品を動かして初めて見えてくるエラーがあります。実践=トライしたからこそエラーが発生し、エラーによって、自ら立てた仮説の間違いや見落としていた前提条件に気づき、修正をかけられるのです。これは、ものづくりや技術開発のような場面だけではなく、勉強やスポーツにも当てはまるように感じています。とにかく「やってみる(トライする)」ことで、自身の弱点や課題が見えてきます。そんなことを伝えたくて小学校で「魔改造の夜」を紹介したのですが、正直あまり上手く話せなかったなぁ、と昨年末の放送を見ながら思い出していました。番組は今後も不定期で放送されると思うので、ロボコンなどに興味のある方は是非ご覧になってみてください。シンプルに楽しいです。

記事タイトル理論と実践
掲載日2024年1月20日
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