ごはん食とパン食について考える
ごはん食がよい
主食として優等生
主食とは、炭水化物が主成分の食品を指し、私たちが活動するためのエネルギー源となるものです(参考01)。「ごはん」は、炭水化物が多いだけでなく消化がゆっくり行われるため、他の代表的な主食、例えばパンや麺類などと比べても腹持ちが良く、活動するためのエネルギー源として優秀です(参考02)。また、炭水化物以外の大切な栄養素であるタンパク質については、1食あたりの量はパンのおよそ6割程度と少ないですが、必須アミノ酸(体内で作り出せない9種類のアミノ酸)の含有比率で比べると、ごはんの方が多いことから、良質なタンパク質を摂取できると言えます(参考03)。
健康寿命を延ばす効果
ごはんに含まれる食物繊維と軟消化性でんぷんは、腸内の善玉菌のエサとなります。そのため、ごはんを食べると腸内環境が整い、免疫力を高められます(参考04)。また、ごはん食は高齢者でも効率よく栄養を摂取できる利点があります。年齢を重ねると、消化器官の機能低下によって食欲が減退する傾向にありますが、脂質の少ないごはんは消化器官への負担が少なく、食べ疲れしにくいからです。つまり、ごはんを主食とすることで、高齢者の健康寿命の維持、さらには介護予防につながるのです(参考04)。
食料自給率100%の安心
パンの材料である小麦の国内自給率は、わずか16%です(2022年)。一方、同じ年度の米の国内自給率はほぼ100%(参考05)。生きるために必要なエネルギーを摂取する主食として、原材料の大半を輸入に頼るパンよりも、ごはんの供給の方が安定していて、さらに国産の食品だという安心感や信頼感もあります(参考06)。
ごはんが育む日本の原風景
ごはんを積極的に食べることは「日本らしい景観」という文化的資源の維持にも繋がります。米を生産するための水田は日本の地理的特徴を活かして作られており、それが伝統的な里山風景を生み出しているからです(参考07)。美しい田園風景は、そこで育った経験のない世代にとっても、多くの日本人の心に安らぎを与えるものです。昨今のインバウンド需要においても、田園風景は自然と人の営みが融合する日本的な景観として、魅力的な観光資源の一つになっています。
参考資料
- 参考01「『主食』はエネルギー源となるもの/主食・主菜・副菜とは?献立作りのポイントとあわせて紹介」【森永製菓】プロテイン公式サイト/森永製菓株式会社
- 参考02「『お米は太る』は大きなマチガイ?/知って学べるコト」お米と健康・食生活/農林水産省
- 参考03「ご飯と食パンのタンパク質の違い/パンのタンパク質量を解説。栄養バランスの整え方も紹介」【森永製菓】プロテイン公式サイト/森永製菓株式会社
- 参考04「腸内環境・免疫力とお米のカンケイ/お米中心の食事と健康寿命/知って学べるコト」お米と健康・食生活/農林水産省
- 参考05「カロリーベースと生産額ベースの食料自給率(令和4年度)/食料自給率(4)令和4年度食料自給率・食料国産率における各品目の寄与度」令和4年度食料自給率・食料自給力指標について/農林水産省
- 参考06「地産地消を心がけよう/日本の食料自給率を上げるには?/日本の食料自給率は? 2022年の状況や低い理由を解説」ロスゼロ/株式会社ロスゼロ
- 参考07「8.食料自給率向上に向けて/その1:お米の自給率」知ってる?日本の食料事情/農林水産省
パン食がよい
食べやすさや時短のメリット
パンは現代人のライフスタイルに適した主食です。ごはんは炊飯の準備が必要ですが、パンは、すでに焼き上がったものを購入できるため、忙しい朝や食事に時間をかけられない時にも、すぐに食べられるという利点があります(参考01)。さらに、調理の負担が少ない(火を使わずに済む)点や、油の少ない食パンなどは、やわらかく消化しやすい点で(参考02)、子どもや高齢者に食べさせやすいという特長もあります。
日本の主食としての歴史
ごはんが日本の伝統的な主食であるというイメージがあります。しかし「白米」を炊いたごはんに限定すると、主食として庶民に定着したのは明治時代であるため(参考03)、日本でパンが普及したタイミングと大きな差はありません。パンは、戦後の食糧(米)不足を補うために学校給食などを通じて広く食べられるようになりました(参考04)。また、白米のごはんにはビタミンB1が不足していることから明治時代には「かっけ」が流行したため、パンを食べた方が健康に良く丈夫な体を作れると当時は考えられていました(参考05)。
主食を超えた食の喜び
ごはん=主食ですが、パンは主食以外でに大活躍しています。惣菜パンは主食にとどまらずに「おかず」としての役割まで果たしています。また、あんパンを始めとした様々なおやつパンが普及しており、中には「おやつ」という素朴な範疇を超えて「スイーツ」として確立しているものも存在しています(参考06)。そういったパンの「おいしさ」には中毒性があり(参考07)、パンのもたらす多幸感は、ごはんからは得られないものだと言えるでしょう。
ご当地パンによる地域活性
パンは、作り手にまわることでも「おいしさ」を追い求められます。例えば、小規模な設備で始められるベーカリーは、成長のピークを過ぎた町や商店街の活性化に一役買うことも可能です(参考08)。パンには、ごはんの持つ日本らしいイメージはありませんが、地域の食材を使った「ご当地」パンは、個人経営でも開発できます。また、特産品の食材がなくても滋賀県の名物「サラダパン」のように、他府県からも購入者が訪れるような個性的なパンが存在すれば「地域おこし」に繋げていくこともできます(参考09)。
参考資料
- 参考01「適糖ライフのススメVol.16〜朝ご飯はパンとごはんどちらが体に良いの?/糖と料理」Sweeten the Future/カンロ株式会社
- 参考02「栄養士が教える、子どもの身体『消化の良い食品』『良くない食品』」タムスわんぱくクリニック小岩
- 参考03「主食は『かて飯』/脚気の発生/明治日本の栄養改善と食品産業」農林水産省
- 参考04「6.日本国民の主食となったパン」パンの歴史館/山崎製パン株式会社
- 参考05「パンは脚気(かっけ)の薬!?/パンの小話(3)/5.庶民に広まったパン」パンの歴史館/山崎製パン株式会社
- 参考06「パン&スイーツの国内市場を調査/プレスリリース」株式会社富士経済
- 参考07「ひとりで30個のパンを買い占める客、多数/なぜ『パン祭り』が沸騰炎上するのか?」プレジデントオンライン/株式会社プレジデント社
- 参考08「『街づくりにはパン屋が最強』と言える7つの理由〜日本における最強コンテンツをどう生かすか」東洋経済オンライン/株式会社東洋経済新報社
- 参考09「【たくあん×マヨネーズ】の滋賀県名物『サラダパン』はなぜ誕生した?たくあんではなくキャベツを使用していた過去も」ウォーカープラス/株式会社KADOKAWA