命を救う毒ガス
問題
「毒ガス」とは、毒性のある気体のことです。火山ガスなどのように自然界で発生するものもあれば、戦場で敵を殺傷するために用いられる人工的なものもあります。
人に害をなす毒ガスですが、使い方によっては人間にとって有用な効果をもたらすこともできます。
第一次世界大戦時、ドイツで開発された毒ガス「マスタードガス」は、歴史上最も多くの人の命を奪った毒ガスとして知られています。ところが、マスタードガスは使い方によっては人の命を救うこともできるそうです。さて、どのような用途で人の命を救うのでしょうか?
ヒント
- マスタードガスはガスマスク普及後に開発された毒ガスで、皮膚に直接作用するびらん剤(ただれさせる効果のある薬剤)の一種です
- 人の命を救うには、マスタードガスを直接使うわけではなく、その研究過程で明らかになった効果を用います
- DNAの複製を阻害する効果を使います
答え
マスタードガスをもとにした「アルキル化剤」は、抗がん剤として用いられています。アルキル化されたがん細胞は分裂や増殖することができず、死滅してしまいます。初期の抗がん剤は正常な細胞も攻撃してしまいましたが、現代の抗がん剤はがん細胞だけに作用する工夫がなされています。