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正しいけれどうまくいかないこともある

ソーシャルな活動で

PTA活動や地域のお祭り、また街おこしや地域の課題解決は、そのほとんどがボランティアによって成り立っています。それもあって、「こうしたら絶対うまくいく」とか「これをやれば大胆な改革ができる」という方法を突き詰めるよりは、「これくらいでやっておけば無難だよね」を正解として活動することが多いように思います。参加者同士の普段の関係性が薄いことや、その活動にかけられる時間が限られていることが一番の理由だと思います。また、そんな状況であっても、イベントは実施しなければいけないし、課題の対策を打ち出さなければいけないことなどが次点の理由ではないでしょうか。これは責められることではなく、大人として理解すべき結果として納得しています。

ビジネスの企画で

一方で、ビジネスの企画など、会社の売上や個人の評価がかかっている場面ではどうでしょうか。それぞれがそれぞれの役割の中で必死に考え、一番良いアイデアを採用しようと努めます。しかし、会議では意見が対立することもあるでしょうし、そもそも画期的なアイデアが出ない場合もあるでしょう。そんなとき、「理論的には正しいけれど、うまくいかない可能性が高い結論」にたどり着いてしまったことはないでしょうか。

例えば、スマホアプリの開発会社が新しいビジネスアイデアを検討して、「日本のスマホ普及率は95%以上ある。日本は高齢者の割合が高いから、高齢者向けの健康維持アプリを開発しよう」という結論にたどり着いたとしましょう。「スマホ普及率が95%以上である」も「高齢者の割合が高い」も間違ってはいないですし、健康維持アプリのニーズやウォンツも多少はあるでしょう。会社は実際にプロジェクトを開始するまでに、事前調査をすることにしました。

強化される間違ったアイデア

実は、うまくいかないのはここからです。上記の「健康維持アプリ」のアイデアは、いろいろな人によって強化されていきます。市場調査チームは高齢者を対象に「こんなアプリがあったら使ってみたいですか?」というアンケートを集め、「7割以上の高齢者が使ってみたいと回答した」と報告します。開発チームは高齢者が多く使う「かんたんスマホ」の画面サイズや使い勝手を研究し、「文字サイズが大きく操作がシンプルであれば、高齢者にも使えそうだ」という報告をします。企画チームはベンチマークとなる他社のアプリや代替となりそうなアプリを調べて、市場にこれだけ存在するのだから、一定の需要があるのではないか、と判断します。社長は会社の税理士や家族に企画を説明したところ、良い反応が返ってきたので上機嫌です。

しかしこれらはまったくの勘違いで、高齢者は新しいアプリやサービスを使わず、スマホを使って健康維持をせず、類似アプリは1社を除いてほとんど使われておらず、その結果プロジェクトは失敗に終わりました。これは筆者が考えた例なので、事実とは異なるかもしれません。しかし、似たような流れでプロジェクトが始まって、そして失敗していくのを何度か目にしたことがあります。

賢い人ほど落ち入りがちな罠

この例の登場人物は、だれも失敗しようと思って企画したり調査したりしているわけではありません。誰もが成功を目指して動いているのですが、成功を目指すが故に失敗を匂わせる情報を蹴ってしまったり、目についたものをうまく関連付けてポジティブな情報を集めてしまったりしているのです。これは、普段から性格が良くて、仕事のできる賢い人ほど陥りがちな罠であるといえます。理論的には正しいし、得られる情報から判断しても正しくみえるのですが、うまくいかないこともあるのです。

自分を疑う想像力を

ではこのような悲劇を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。ひとつは、客観的な視点でプロジェクトを評価することです。考えれば考えるほど、前述の「ネガティブな情報を否定してポジティブな情報ばかり信じる」状態になりがちです。自分に客観性がかけているように感じたのであれば、そのプロジェクトとはまったく関係のない第3者に、できれば利害関係のない方に訊いてみるとよいでしょう。

また、会議室や机上のパソコンから得られる発想や情報には限界があります。街に出て、フィールドワークをしてみると、おそらくこれまでとは全く違う意見や、全く違う視点からの評価が得られると思います。さらに、一度始めたプロジェクトを中止したり変更したりする勇気を持ちましょう。時間と労力をかけて進めたものは惜しくなるのも当然です。しかし、失敗の可能性が高まった段階で、撤回したりやり直したりするのは早ければ早いほど良いはずです。「正しいけれどうまくいかないこともある」を念頭に置いておくことは、自分を疑う想像力を働かせるきっかけとなってくれます。

もう一つは、チームの中に「批判的思考」ができるメンバーを適度に混ぜ込みましょう。批判的思考を担うメンバーの割合が高すぎると、何も進捗しない良くないチームになってしまいますが、失敗の可能性を指摘することは裏を返せば成功の可能性を高める示唆でもあるはずです。

記事タイトル正しいけれどうまくいかないこともある
掲載日2023年10月21日
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