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当たり前の難しさ

スポーツで湧く関西

2023年は、プロ野球のセ・リーグを阪神タイガースが、パ・リーグをオリックス・バファローズが、そしてサッカーのJリーグをヴィッセル神戸が制し、年の瀬に関西エリアは大いに湧きました。かく言う私も、東京で生まれたことをひた隠しにするほど関西に魂を売って生きてきたので、道頓堀に身投げしないまでも、喜ばずにはいられませんでした。実のところ、プロ野球への関心は薄く、日本一になった阪神タイガースの顔ぶれを見ても岡田監督しか分からない始末ですが、そのような私でも、街なかで「六甲おろし」を耳にすると思わず(何だったら前奏から)口ずさんでしまうほど、阪神というチームは地元に深く根付いています。

接戦のJリーグ

そんなこんなで、大阪と兵庫を行き来して行われたプロ野球の日本シリーズや両チームの優勝パレードについて「地元が活気づいてエエやん」と好意的に受け止めながら、腹の底では「ヴィッセルも優勝できそうやねんけどなー」と、そわそわワクワクしていました。今季のヴィッセルは、シーズンのほとんどを首位に位置する好調ぶりでしたが、2位のチームとの差は少なかったため、とくに終盤は勝ち点をとり続けなければ簡単に追いつかれてしまう状況でした。そのため、そわそわやワクワクよりも本当はハラハラドキドキの方が強かったかも知れません。

ヴィッセルがなぜ強かったか

さて今回の優勝、ヴィッセル神戸に思い入れのない人にとっては「あんなにお金を使えば当たり前」と腐したくなるかも知れません。何しろシーズンの途中までは、長年名門バルセロナに所属し、スペイン代表としてワールドカップの獲得経験のある、イニエスタ選手が所属していたからです。しかし、ヴィッセルに関心を持ち続けてきた人間は「お金だけ積んでも強くなれない」ことを散々思い知らされました。プロ野球でも、いっちゃんええ(一番良い)選手を買い集めた割には、成績は全然ふるわないというケースをしばしば目にします。今年のヴィッセルがそこを打破できたのは、実績のある選手たちが「当たり前のことを徹底してやり続けた」ことが要因です。

できる人ほどサボらない

イニエスタ選手だけでなく、過去に所属していたビジャやポドルスキなどの華々しい外国人選手に隠れてしまいがちですが、日本代表として活躍した実績のあるベテラン選手たちが、おもに優勝の立役者としてハードワークをし続けた1年でした。山口蛍選手、酒井高徳選手、武藤嘉紀選手、大迫勇也選手は皆30歳を過ぎていますが、若手の選手たちよりも走り続けていました。ネームバリューがイニエスタほどではないにしても、スター選手たちがベテランの地位に甘んじずに戦う姿は、長年漂っていたチーム全体の不甲斐ない雰囲気を変えました。優勝してくれた地元のチームなので、ヴィッセル神戸の話に終始してきましたが、Jリーグ全体を見ていても、さらに世界のトッププレイヤーを見ていても感じるのは、できる人ほどサボらないということです。

ハードワークは当たり前?

世界のトップクラブチーム(パリサンジェルマンとかレアルマドリードやバルセロナ、マンチェスターシティなど)では、リーグの中でも強豪とはいえないヴィッセル神戸や、ワールドカップでは決勝トーナメントからなかなか勝ち進めないランキングの日本代表とは違い、全員が走り続けるようなプレースタイルは求められていません。けれども、トップチームに所属して活躍するスター選手たちは、自らが課せられているポジションにおいて絶対に手を抜きません。そんなの年間何十億、何百億もお金を貰っているんだから「当たり前じゃないか」と思われるかも知れませんが、日本でも海外のリーグでもあまり知られていない選手は、まあまあ手を抜いている様子を見かけます。

当たり前のことを頑張って続ける

大成したからこそ「当たり前のこと(努力)を徹底してやり続けられる」のか、「当たり前(努力)を続けられる」人だから大成したのか、どちらが先か私には分かりません。しかしサッカーに限らず、多くの場面で目にする光景であることに間違いありません。「才能がある」から(楽しくて)努力を続けられるのか、努力を続けられることを「才能がある」と呼ぶのか。卵が先か、ニワトリが先か。どちらが先か、ではなく循環してできる現象なのか。とりあえず凡人の自覚がある以上は、当たり前のことを頑張って続けなくては、とヴィッセル神戸の優勝の喜びと共に自らの背筋を伸ばした師走です。

記事タイトル当たり前の難しさ
掲載日2023年12月9日
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