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ゲージツの秋

今年は満喫するぞ

ようやく秋らしくなってきました。スポーツの、読書の、食欲の、などの色々な秋の中から「芸術の秋」を取り上げたいと思います。展覧会は他の季節にも企画/開催されていますが、多くの美術館は「秋」の展覧会となると明らかに気合いが入っているような印象を受けます。それでも「足を運ぼう!」と意気込める企画が少ない年度もあるなか、今年については当たり年だと感じています。しかし「行きたい!」と思ったまま、開催期間が数ヶ月あるのにかまけて、ついつい行きそびれてしまう経験は数知れず。今年はそんな惰性を克服するべく、前売り券を購入してみたり、無理やり人に付き合ってもらう形でスケジュールを確定させてみたりと、怠け者の私なりにアクションを起こしてみました。

まずは近場から

そんなこんなで、先日「デ・キリコ展」を観て参りました。この展覧会に関しては「ちょっと近くまで来たから寄ってみた」という行きつけの居酒屋方式で(そんな方式はない気もしますが)鑑賞。「近いからいつでも来られるでしょ」とタカを括って結果的に見逃してしまう、という定番のミスを回避できました。この展覧会に行こう!と決意した動機は、デ・キリコについて、学生のときに極めていい加減なレポートを提出した、ほろ苦い?思い出と、山田五郎氏によるYouTube「オトナの教養講座」での解説が秀逸だったことによります。

リベンジ?なるか

山田五郎氏のYouTubeのおかげで、学生の頃はさっぱり分かっていなかった、デ・キリコの「形而上絵画」というものに、いくらか理解が深まりました。その時点で、内容のないレポートを書いた後悔(ほろ苦い思い出)はかなり昇華できた気もします。ただ、デ・キリコの本物の作品を前にした際の「何が良いのか分からない」という学生時代のモヤモヤは、人生経験を積んだ今なら多少は違うのだろうか、という「?」もスッキリさせたかったのです。

集めると見えてくる

今回については、私が経験を重ねたぶん新たに見出せたものがあったというより、デ・キリコというアーティストの「100点以上の作品をまとめて鑑賞」できたことによって、学生の頃とは違う感想を抱くことができました。例えば、かつては油絵なのにペンキのようなベタ塗り感が好きになれなかったのですが、その傾向は初期作品だけで、後期には味わいのある色調や質感に変化していると分かりました。また、一貫して違和感のある非現実的な作風の中でも、晩年の作品の方が私は面白いと感じられることにも気づけました。人気や知名度の高い作品を目玉とする展覧会も見応えはありますが、「デ・キリコ展」のように、ここまで1人の作家の作品と人生を振り返れる展覧会は稀少なので、かなり得した気分です。

実は、ポップだった?!

さて、ここまでガッチリ向き合ってもなお、好きな作家でもなければ、好きな作品としていずれかを挙げることもない「デ・キリコ」ですが、ミュージアムグッズの出来映えが大変に優れていました。図録の表紙デザインが何より素晴らしく、他の企画ものもセンスが良い。とにかく映えています!良いデザイナーさんに依頼したからと言ってしまえばそれまでですが、グッズへの落とし込みがしやすいという点では、デ・キリコは(アンディ・ウォーホルと友人だったこともあいまって)、現代的でお洒落なアーティストに数えられるのかも知れません。

記事タイトルゲージツの秋
掲載日2024年9月28日
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