排熱を再利用する
問題
自動車のエンジンに代表される内燃機関や、発電所などで使われる蒸気機関などの「熱機関」は、燃料を燃焼させて熱を作り出し、この熱から力学的エネルギーを取り出しています。
熱機関の効率は、得た熱量のうち仕事となった割合で計算されます。蒸気機関の熱効率は0.1〜0.2くらい、ガソリンエンジンの熱効率は0.2〜0.3くらい、蒸気機関を洗練した蒸気タービンの熱効率は0.4くらいと、その熱量の多くは排熱となっていることがわかります。
この排熱を再利用してさらに仕事をさせることができるエンジンが研究されていますが、そのエンジンは熱をあるものに変換することで仕事をします。そのあるものとは何でしょうか?
ヒント
- エアコンや給湯器などのヒートポンプではありません
- 漁船などで実用のための検証実験が行われています
- エネルギーを伝える媒質は空気です
答え
熱を音に変換する「熱音響現象」の研究が進んでいます。筒の片側を加熱すると、筒の中の空気が振動し音がなります。ヒントの漁船の検証実験では、エンジンの排熱で冷凍庫を冷却することに成功しました。現在のところ、熱音響の効率は0.1前後と高いとは言えませんが、複雑な機械を必要とせずに熱をエネルギーに変換できるため、メンテナンスフリーで長寿命というメリットがあります。さしあたって、大型コンピューターの冷却、工場排熱の処理、電力の乏しい地域でのエアコンなどでの実用が期待されています