セレンディピティ
情報探索中に目的以外の価値のある情報を見つける能力を「セレンディピティ」といいます。セレンディピティの例やセレンディピティを身につける方法についてまとめました。
セレンディピティとは
セレンディピティとは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値のあるものを見つける能力です。転じて、意外な事から問題解決の糸口を発見する能力も指す事もあります。
ことばの由来
英語では「serendipity」と書きます。ホラス・ウォルポール(政治家、小説家・イギリス)が友人にあてた手紙の中で、「セレンディップ(スリランカ)の三人の王子」という童話を引き合いに、「偶然幸運に出会うこと」を「セレンディピティ」と呼ぶことを提案したのが最初と言われています。日本語では「偶察力」や「徴候的知」などが充てられることがありますが、明確に定義されたものではありません。
セレンディピティがもたらすメリット
- 失敗の中から成功を見つけることができる
- 過程の中から発見することができる
- 関連のないものを結びつけることができる
セレンディピティの対義語
セレンディピティとは逆に、決まり切ったことしか見つけられない能力を「ゼンブラニティ」と呼ぶことがあります。ウイリアム・ボイド(作家・イギリス)による造語です。
セレンディピティの例
日常生活
捜し物、片付け
探し物をしていて、以前に無くしたと思っていた別のモノを見つけることがあります。片付けをしていると、片付けの手を止めて見入ってしまうほど興味のあるモノを見つけることも。
街歩き
特に目的を持たずに街を歩いて、気になったお店や場所をみつけることがあります。
ザッピング、ネットサーフィン
テレビのチャンネルを切り替えながら(ザッピング)いろいろな番組を視聴します。ポータルサイトやお気に入りのサイトを起点に、リンクを辿りながらいろいろなWebサイトをみます。
自然科学
万有引力の発見
アイザック・ニュートンはリンゴが落ちるのを見て万有引力の着想を得ました。これは創作であるとされているものの、偶然の発見の例としてわかりやすい例です。
ポロニウム、ラジウムの発見
キュリー夫妻は、ウランの放射能の研究の中でポロニウムやラジウムという別の放射性元素の存在を知りました。
ペニシリンの発見
アレクサンダー・フレミングは、ブドウ球菌を培養中に混入したアオカビが周囲に及ぼした影響から、抗菌作用のあるペニシリンを発見しましたた。
商品開発
刃を折るカッターナイフ
岡田良男(オルファ)は、割れたガラスの鋭利さと板チョコレートの折りやすさにヒントを得て、刃を折るカッターナイフを開発しました。
付箋
スペンサー・シルバー(3M)が強力な接着力の開発中に、「よくつくけれど、簡単に剥がれてしまう」という失敗作ができあがりました。この失敗作の有効利用を考えている最中、歌集から紙のしおりが落ちたのを目にしたシルバーは、「のりつきしおり」の開発を決意しました。
電子レンジ
パーシー・スペンサー(レイセオン)は、レーダー開発の過程で、機器の近くにある食品が温かくなることに気付き、マイクロ波が調理に使えると考えました。
販売促進
店舗レイアウト
利用者が店内をくまなく回遊できるようにレイアウトすることで、ついで買いや衝動買いを促すことができます。
ECサイトの商品提案
「おすすめ商品」「よく一緒に購入されている商品」「この商品を買った人はこんな商品も買っています」などの提案は、目的以外の商品を購入させる効果があります。
セレンディピティを身につけるには
セレンディピティを獲得する3つのA
Action:行動
待っているだけでは何も得られず、新しい気付きもない。とにかく行動すること。
Awareness:気付き
注目しているもの以外にも目を向け、何かが起こっていることを気付く広い視野を持つこと。
Acceptance:受容
気づいたものが自分の価値観やこれまでの常識と異なっていても受け入れること。
セレンディピティを身につける具体的な方法
沢山の人と交流する
自分とは違う価値観を持った人と交流することで、ソーシャルキャピタル(人間関係資本、人とのつながりによる無形無償の財産)を増やすことができます。
SNSを活用する
ある人のタイムラインの中から、つながったきっかけ以外の側面を見いだしましょう。「情報」ではなく「人」をフォローする意識を持つとよいです。
スパークを促がす
知人、友人同士を引き合わせ、新たな化学反応を期待しましょう。
アイデアを公開する
アイデアはため込まず、アウトプットしたほうが良いです。
視点を広く持つ
多彩な情報源から情報を得るのが基本です。
多様性を重視する
これまで知らなかったもの、受け入れ難かったものにも価値を見いだすことができます。
経験する
何事にもチャレンジし、経験値を増やすことが大切です。
深く考える
一度限界まで考えると、頭の中で情報が整理され、一見関係ない情報同士の連関が見いだせるようになります。
情報の蛸壺化を防ぐ
人と人とのつながりの多くは、同じ地域に住んでいる、同じ会社で働いている、同じ趣味がある、など、お互いの共通部分を発端にスタートするのがほとんどです。SNSではその傾向がより強くなり、つながりの発端となった情報を中心にフォローしてしまいます。この結果、新しい気付きや広がりが阻害される「情報の蛸壺化」が起こりやすい状況になりがちです。「情報」をフォローするのではなく「人」をフォローすることで、過度なキュレーションを回避し、SNSが本来有するソーシャルネットワーキングの効果を十分に享受することができるようになります。