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責任をとってやめることについて考える

責任をとってやめることについて考える
前提となる事実
辞書によると、引責辞任とは「責任を自分の身に引き受けてついていた任務を自ら辞めること」とあります。

責任者はやめるべきである

責任を果たす立場だから

組織のトップが果たすべき責任としては、大きく分けて「遂行責任」「説明責任」「賠償責任」の3つがあります(参考01)。引責辞任は、主に「賠償責任」に該当します。組織の起こした問題によって「不利益」を被った相手(被害者)がいる場合には、問題が起きた原因の説明や、改善策を打ち出すだけでは、被害者を納得させられないこともあるでしょう(参考02)。被害者の苦痛や不満を少しでも軽減し、感情を引き受ける手段として、トップが職を辞する必要があるのです。

組織のイメージを回復できる

不祥事などによって組織のイメージが著しく低下した場合に、トップが辞めて交代することで、ある程度は悪いイメージを払拭できます(参考03)。組織、特に上意下達が徹底されている組織では、トップの意志や判断が組織の動向に大きく影響します。トップが変わるということは、組織が変わるということと同義なのです。

ガバナンスの観点

組織はトップの所有物ではありません。そのため、たとえ設立者や創立者であっても、課せられた役割に対して、能力水準や努力水準が及んでいなかった場合には、その立場を交代させられる仕組みによって、組織を健全な状態に保つことができるのです(参考04)。例えば、2023年7月に株式会社ビッグモーターでは、創業者でもある兼重社長は、保険金の不正請求問題などについて謝罪し辞任しました。問題が発覚した時点で、兼重社長は「指示はしていない」「知らなかった」と会見で述べていました(参考05)が、その発言が事実であっても、法的に問題のない経営を遂行できていなかった点で、トップとして期待される役割を果たせておらず、引責辞任に至ったことは当然です。

責任者はやめるべきではない

責任は果たすもの

「引責辞任」は、厳しい現状から逃げただけに見えてしまう場合もあり、むしろ無責任な印象が残ります。本来、組織のトップが果たすべき責任としては、引責辞任による「賠償責任」以外にも、組織の運営を順調に進めることや利益を出すことなどについて、求められる水準までやり遂げる「遂行責任」があります。また不祥事に限らず、結果についての経緯や原因を究明して公にする「説明責任」もあります(参考01)。つまり、問題が明るみに出た場合には「説明責任」を果たし、その原因をふまえた対応策を提示するなどの「遂行責任」を果たしてから、後任にバトンタッチするべきです。

すぐに辞めると信頼を失う

問題の見極めや改善に着手する前に、期待どおりの成果が出ていないことを理由に短期間でトップが次々と交代した場合、その組織への社会的信用度は落ちていきます。例えば、日本の総理大臣は海外のトップと比べると短期政権であることが指摘されています。しかし、バブル経済破綻以降の日本の総理大臣の中では、小泉総理や安倍総理は長期的に政権が継続したことで、日本の国際的な信用度が高かったのも事実です(参考02)。このように、トップが変わらないことで、周囲からの信頼を獲得できることもあります。

成長を阻む

問題が浮上したことを理由に役職を辞める(辞めさせられる)ことは、組織に悪影響を与えます。問題が発生する都度、トップや上層部が引責辞任をすることが常態化した場合、組織全体が失敗を恐れて挑戦しない風潮が生まれ、成長が阻害されてしまいます(参考03)。また、より悪いケースとしては、失敗を隠蔽する組織になる可能性があります。責任者が問題や失敗の後始末までも担う形にすることで、健全で前向きな組織にすることができるのではないでしょうか。

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