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転売について考える

転売について考える
前提となる事実
転売をする人たちのなかでも、1つの商品を買い占めるなどして価格を釣り上げ、定価では商品が手に入らない状態にする人たちは、昨今「転売ヤー」と呼ばれています。

転売は良いことである

転売自体に問題はない

転売の中には、定価や相場よりも安く商品を仕入れて、定価やそれよりも安く販売する「せどり」と呼ばれるものがあります(参考01)。「せどり」をするためには、商品に対する知識や、販売できる状態にメンテナンス(修理や復元、クリーニング)するための知識も必要です。また、多くの人にとって身近なリサイクルショップや古本屋なども「転売」をベースとする商売です。一度は不用品と判断されたものが単純に廃棄されることなく、発売年度の古さや中古品であることをふまえても、価値を感じる人に商品をつなぐ転売は、昔から多くの人に利用され受け入れられているのです。

需要と供給に基づいている

「転売ヤー」のように、発売直後に大量に買い占めるなどして価格を高騰させて転売を行なったとしても、定価より高い価格を支払ってでも、その商品を手に入れたと考える消費者がいるのであれば、そこでは需要と供給のバランスが成立しているため適正な取引だと言えます(参考02)。同じものを欲しがる人に対して、その商品の数が不足していれば、価格が釣り上がるのは自由主義経済においては正義です。転売でなくとも、生産者側や製造業者側が、流通数をコントロールするケースがあります。たとえば、収穫量が天候などに左右される生鮮食品は、不作の年は価格が高騰しますが、採れ過ぎた場合には価格が下がり過ぎないように、廃棄するなどして出荷数を抑えることがあります(参考03)。流通する商品数と価格を調整している点では、転売との間に大きな違いはありません。

生活必需品については法律によって守られている

食料などの生活必需品については、大量の買い占めが禁止されています。具体的な品目として指定されていなかった「マスク」も、コロナ禍においてはその対象となりました(参考04)。つまり、それ以外のものは無くても「生活を脅かすもの」ではない、ある意味贅沢品です。そのようなものの価格を釣り上げたり、手に入れられないケースが生じても大半の人にとっては問題となりません。また、転売は投資とも性質が似ており、大量に購入した場合に売れ残ってしまったり、在庫を抱えて保管に必要な出費だけが嵩んだりと、損するリスクも背負っているため(参考05)(参考06)、後ろ指を指されるような商売ではないはずです。

転売は悪いことである

法律を犯している

転売そのものは違法ではありませんが、継続して転売を行う場合には、本来は盗品などの売買を防ぐことを目的とした「古物商許可証」を取得する必要があります。「古物」とは中古品だけではなく、一度一般に流通した新品も該当します(参考01)。例えば、人気のゲーム機を新品で購入して、その後転売を繰り返した場合には「古物営業法」を違反したとして逮捕されるケースもあります。発売当時入手困難だった「PlayStation 5」は、不正な転売を防ぐために、購入時、製品の入った箱に記名を依頼する販売店もありました(参考02)。他にも、ダフ屋(乗車券やイベントの入場券を他人に売る目的で購入し高額で販売する)行為は各都道府県の条例で禁止されており、またチケットの不正転売も違法です(参考01)。

生産者に利益が渡らない

チケット不正転売禁止法が施行された背景には、消費者が定価でチケットを購入できない点だけでなく、高値で取引されてもその利益が興行主には渡らない点が問題視されました(参考03)。コンサートはチケットが完売しても利益の少ないイベントであるため、会場のみで販売されているグッズの売上が収益に大きく影響します(参考04)。転売によってチケットが高額になることでグッズの販売が伸び悩んでしまうと、その後のイベントが開催されなくなる可能性もあります。また現時点では違法でなくとも、買い占めによって価格が高騰して入手困難になった人気商品も、高値で転売された分の利益が生産者には還元されない状況は不健全です。人気商品のメーカーは発売までに多くの開発コスト(時間、労力、費用)をかけています。なかには、開発や製造のコストを単純に反映させるのではなく、できるだけ多くの人に楽しんでもらえる価格設定を目指しているメーカーも少なくありません。これらは第一次産業の生産者にも当てはまります。良い商品やサービスの生産を継続していくためにも、「転売ヤー」ような商売を見過ごしてはいけません。

法律以前に善悪の問題

人気商品を大量購入して買い占め、右から左に転売して暴利を貪る商売に不快感を示すのは、それを欲しくても買えなかった人たちだけではありません。需要が増え供給が少なければ価格の高騰は必然で、資本主義(自由主義経済)においては正義だとしても、経済のみで私たちの暮らしは成り立っていません。経済も政治も人々を幸せにするために存在するものであり、人々の暮らしよりも先に立つものではありません。たとえ、商売(=経済)だけにフォーカスしたとしても、日本では古くから商人の教えとして「三方良し」という考え方があります。「三方良し」とは、売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるという考え方で、現代求められている企業の社会的責任にも通じています(参考05)。また、商品やサービスがこの世に存在する本来の目的に従えば(参考06)、コンサートチケットはそれを体験したい人たちのために、ゲーム機はそれをプレイしたい人たちのために流通するべきなのです。

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