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敬語について考える

敬語について考える
前提となる事実
文化庁による令和元年度(2019年発表)「国語に関する世論調査」では、20代〜60代の間で「敬語の使い方」が乱れていると感じている人の割合は、6割を超えています。

敬語は必要である

グローバルなエチケット

外国では、上下関係なくフランクに言葉を交わしているように考えられていますが、実際には敬語とかなり近い表現が使われています(参考01)。世界の共通語である英語でも、場面に応じて丁寧な改まった表現が求められます。例えば、ビジネスシーンにおいて相手に何かを促すとき、ただ文頭や文末に「please」を付けて済ませてしまうと違和感を与えるようです。また、お願いするときに「Will you〜?」では不適切な可能性があり「Would you〜?」を使う方が妥当であるなど、親密度に加えて、フォーマルな場面かカジュアルな場面なのかを考える必要があります(参考02)。つまり敬語やそれに付随する礼儀正しさは、グローバルな視点でも好感度が高く(参考03)、場面を見極める能力があることを印象づけられるのです(参考04)。

相手を敬う日本の伝統文化

敬語は古代より日本語表現に存在しています。歴史的には、上下関係を明確にする役割を果たし、年長者に対して使うものでしたが、時代と共に変化し簡略化しています(参考05)。それでも敬語が形を変えながら現代に至るまで残っている理由として、「相手を敬う姿勢」を敬語の本質と捉え、日本人はそれを美徳と感じていることが挙げられます。「東京2020 夏季オリンピック」の招致の際、プレゼンテーションで強調された「おもてなし」というキーワードにも通じています。敬う姿勢は尊敬している相手にだけ向けられるものではなく、相手を尊重することと同義です。さらに、階級がなくすべての人が平等な現代において、敬語は年齢や立場に関係なく、お互いが丁寧な言葉を用いてお互いを尊重し合うための重要な役割を果たしています(参考05)。

適切な距離を保てる

現代社会では、1人の人間が所属する場が多くなっており、人間関係も複雑になっています。家族や友達との距離感と、職場の人や取引先の人と距離感とは違う方が自然です。もちろん、いわゆるタメ口を使うことで一気に心理的距離感を縮めて、誰とでも仲良くなりたい人もいるでしょう。しかし、誰とでも近づき過ぎたくない、適切で心地よい距離感を保ちたいと考えている人も多く、その実現にも敬語が効果的に働きます。敬語というものが存在することによって、距離感のバリエーションを維持できるのです(参考06)(参考07)。

敬語は不要である

効率が悪い

日本語の敬語は、情報伝達やコミュニケーションを図る上であまりにも非効率的です。上下関係や年齢をふまえて、相手に対して「尊敬語」を使ったり、自らへりくだって相手を立てる「謙譲語」を使ったりと(参考01)、本質であるはずの内容以外の要素に配慮する必要があるからです(参考02)。その結果、敬語を「正しく使えているか」に気を取られ、敬意の有無はおざなりになっている現状です(参考03)。そのような形骸化した風習に労力を費やすよりも、伝える内容を充実させることを優先させるべきです。

「やさしい日本語」の実現のために

地域や学校、職場においても多国籍化が進んでいく現代において(参考04)、日本人でも使いこなせていないような(参考05)、複雑な敬語は減らしていくことが賢明です。すでに公的な場所でのインフォメーションなどでは「やさしい日本語」が推奨されています。「やさしい日本語」とは、日本語をある程度理解できている外国人に向けて、ストレートで分かりやすい表現を使用することを指します(参考04)。公的な表示だけでなく、日常的なやり取りにおいても、持ってまわった表現になりやすい敬語を使わない方が、子供や高齢者などにとって、聞き取りやすく、理解しやすい「優しい」日本語になるはずです。

距離感を縮めたい

敬語を使っていると、コミュニケーション自体がビジネスライクで味気ない印象になり、親しくなる機会が失われます(参考06)。また、「慇懃無礼」という言葉があるように、上辺だけ丁寧に話していても、かえって失礼だと捉えられる場合があります。相手に敬意を表す方法として、言葉ばかりに気を取られてしまうと本末転倒になります。敬語にこだわるよりも、相手の話に熱心に耳を傾ける、相手の良さをしっかり伝えるなど、敬意を他の方法で示す方が人間関係を築くためには重要です。さらに、昔ながらの上下関係にこだわる形よりも、フラットな関係性を構築する方が、チームワークが求められるようなあらゆる場面において、高いパフォーマンスを発揮できる時代なのです(参考07)。

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