投資について考える
投資はするべきである
視野が広がり、世の中への関心が高まる
株式投資をすると、「世の中」を知ることができます。「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉どおり、原因と結果だけを見ていると無関係に思えた物事も、順を追っていくと因果関係が見えてきます。さほど重要ではなさそうな事象をきっかけに、思いもよらない業種がビジネスチャンスを掴み、大きな利益を生み出すことがあります。何が何に繋がっていくのか「世の中」の動きに目を向け、予測していく視点を持てると、自分の所属する社会、ひいては世界を知ることができます。また、株式や国債に投資する過程で、応援できる企業や業界、国や地域が増えることは、自身の人生の基盤をどこに置くかなどを考える機会にもなります。投資によって、単純に利益を得る以上の豊かさを手に入れられるとも言えるでしょう。
経営者の目線を持てる
株式投資の過程で、その会社の決算報告や業績の内容などを細かく知ることができます。さらに、株式の保有数に応じて、株主総会に参加し自らの票を投じることもできます(参考01)。つまり、経営者ではなくても経営者の視点に立つことができるのです。他にも、投資全般において、自らの資産を管理する能力が身につきます。本来、投資に注ぎ込む資金は、今持っているお金のうち「生活に必要なお金」と「いざという時のためのお金」を差し引いた金額でなければいけません。投資を通じて自己管理能力も身についていくはずです。
社会や未来への投資でもある
投資によって、社会全体をより良くしていくことができます。投資は、必ず利益が約束されているものではない前提ですので、心から応援したいと思える投資先を選ぶほうが望ましいです。例えば、家族や自身の持病の治療を研究している企業や、環境負荷の少ない素材や技術を作っている企業など、自分の暮らしを良くするために活動している投資先を選択をすれば、必然的に社会にとっても有益な投資となるのです。
投資しないリスクが大きい
現役世代にとって、年金は「支払っている額」に対して「将来受け取れる額」が少なくなるという試算があります(参考02)。また、長らく続いている低金利によって、預貯金の利率もゼロに等しく、昭和の頃のように金利によって資産を増やすことはできません(参考03)(参考04)。むしろ物価の上昇によって(参考05)(参考06)預貯金の額は同じでも、その価値は目減りしていると言えます(参考07)。
参考図書
- 今から身につける【投資の心得】/監修:八木陽子/えほんの社
- 本当の自由を手に入れる【お金の大学】/著者:両@リベ大学長/朝日新聞出版
- きみのお金は誰のため〜ボスが教えてくれた『お金の謎』と『社会のしくみ』/著者:田内学/東洋経済新報社
参考資料
- 参考01「株主になるとどんな権利があるの?/投資の時間」日本証券業協会
- 参考02「年金の受給額~わたしはいくらもらえる? 年代・年収・職業別に解説~」株式会社三井住友銀行
- 参考03「100年以上にわたる郵便貯金の金利推移をさぐる」Yahoo!ニュース
- 参考04「1.金利の推移〜なぜ今、資産運用が必要なの?」野村アセットマネジメント株式会社
- 参考05「2020年基準消費者物価指数全国2023年(令和5年)12月分(2024年1月19日公表)」総務省統計局
- 参考06「去年の消費者物価指数前年比で3.1%上昇、41年ぶりの水準」NHK
- 参考07「株価が上がっているのに、『価値の下がっているモノ』を貯め込んでいる日本人」ニューズウィーク日本版/株式会社CCCメディアハウス
投資はするべきではない
失敗するリスクがある
貯金や預金ならば、どれだけ利子が少なかったとしても、引き出したり引き落とされたりしない限り残高が減ることはなく、元本割れのリスクはありません。しかし、投資はリスクとリターンがトレードオフの関係にあり、高いリターンを望めば高いリスクが伴い、低いリスクを望めば低いリターンしか得られません。また、投資した金額がゼロになってしまう可能性もあり、元本の保証がない点でギャンブルと同一であると言えます(参考01)。
騙されるリスクがある
日本においては、戦後から高度成長期まで政府が推奨していた預貯金は、それこそ貯金箱に自分のお金を入れていくのと同じで、小学生でも予備知識なしに安心して行えました(参考02)。しかし、投資をするにあたっては、ある程度勉強してからでなければ「絶対に儲かる」などと謳われる詐欺の被害に遭ってしまいます(参考03)。法律で「絶対に儲かる」という表現は禁止されていても、利率が高かった頃の定期預金のように手堅いリターンを得られるかのように宣伝している金融商品(投資対象)も存在します。例えば、日本の低金利と照らし合わせて、利率の高い国で積み立てを奨めるような投資があります。記載されている情報は何ひとつ間違っていなくても、国際情勢的に不安定な国である場合も少なくありません。そのような金融商品を扱っているのが、知名度の低く、いかにも怪しい企業ばかりではなく、有名な大手企業が扱うものも多いため、リスクに気づきにくい難しさがあります(参考04)。
予測や予想が困難
投資の中でも比較的リスクの低い、例えば「債権(国債や社債など)」のようなものの場合は、かなり長期的に投資した金額を動かすことができません(参考01)。また、あらゆる投資は、預貯金のように「毎月1万円積み立てれば、1年後には12万円、5年後には60万円」という確実性はありません。そのため、「いつまでに、◯◯万円増やしたい」という計画や目標を立てにくい現実があります。
投資が格差を拡大させる
投資は、生活に必要なお金を投じて行うものではないことから、当然、余剰資金のある人しか参加できません。そのため本人の勤勉さとは関係なく、もともとお金に余裕のある人がさらに不労所得を得られるシステムであり(参考04)、大きな金額を動かせる人ほど優位に立てる仕組みである以上、格差を広げてしまう可能性があります(参考05)。
参考図書
- 今から身につける【投資の心得】/監修:八木陽子/えほんの社
- 本当の自由を手に入れる【お金の大学】/著者:両@リベ大学長/朝日新聞出版
- きみのお金は誰のため〜ボスが教えてくれた『お金の謎』と『社会のしくみ』/著者:田内学/東洋経済新報社
参考資料
- 参考01「資産運用はしないほうがいいの?理由を踏まえたリスクと成功のためのポイントを解説」さちかち/株式会社足利銀行
- 参考02「戦後復興からなる現在の貯蓄」TDB Economic Online/帝国データバンク
- 参考03「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!/金融庁からのお願い・注意喚起」金融庁
- 参考04「トルコリラで「騙された」という日本人の甘え〜売る側も問題だが表面利回りしか見ていない」東洋経済オンライン /株式会社東洋経済新報社
- 参考05「資産格差拡大の予兆 〜家計のリスク許容度と金融資産格差の強い関係〜/マクロ経済分析レポート」第一生命経済研究所
- 参考06「米国の所得格差と経済政策」国際問題 No.703(2021年10月)/日本国際問題研究所