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デフォルト

デフォルト

選択肢が多いことは良いことですが、多すぎる選択肢は人にストレスを与えます。選択肢の中に「デフォルト」を用意することで、そのストレスを軽減することができます。

デフォルトとは?

「デフォルト」は経済用語としては「債務不履行」のことですが、情報技術では「初期値」や「規定値」を意味します。転じて、意図を持ってあらかじめ準備された選択肢をデフォルトと呼びます。

2つのデフォルト

サービスや商品を提供する際に用意するデフォルトは、その目的によって大きく2つに区分することができます。

利用者の同意を得るために
利用者の同意を得ると、利用者と提供者のいずれか、または両方にメリットがある場合に、明示的な拒否がなければ同意とみなすことを目的としたデフォルト
ユーザー体験の向上のために
多数の選択肢の中から選ばせる必要がある場合、最も標準的な選択肢を用意することで、利用者のストレスを軽減することを目的としたデフォルト

デフォルトの例

利用者の同意を得るために

臓器提供者を増やしたい
臓器提供の意思表示では「臓器提供する」の選択肢をデフォルトにすると、「臓器提供しない」を選択する人以外が対象となるため、臓器提供者を増やすことができます。現在の臓器提供意思表示カードでは、3つの選択肢のうち1番、2番を「臓器提供する」に充て、3番を「臓器提供しない」に充てている。その次のステップで、「提供しない臓器」を尋ねることで、提供してもらえる臓器の種類を増やすフローにしています。
応用:家電のリサイクル、携帯やスマホの回収
レジ袋の利用数を減らしたい
「レジ袋を提供しない」ことをデフォルトにすると、レジ袋を断った利用者にインセンティブを与えるよりもレジ袋の利用者を減らすことができます。
応用:ホテルのアメニティ
保険に加入させたい
保険に加入させたい場合は加入することをデフォルトにします。また高額なプランをデフォルトとして設定すると、より低額なプランがあるにもかかわらず、そのまま加入し続ける利用者が多いようです。
応用:携帯電話のオプションサービス、ケーブルテレビの番組パック
予防接種や検査を受けさせたい
予防接種や検査は「受けること」をデフォルトにすると、辞退の意思表示をする人は少ないため、多くの人が受けることになります。
応用:車検、交通安全協会
アンケートの回答率を高めたい
アンケートの回答を任意にすると、回答率が低くなります。イベントやサービスの利用フローの途中にアンケートに回答するステップを設けることで、アンケートの回答率を高めることができます。
応用:利用者情報の収集、アクセス解析

ユーザー体験の向上のために

セレクトボックス
Webサイトのセレクトボックスでは、「selected」を指定することでデフォルトの選択肢を指定することができます。例えば住所の入力フォームでは、都道府県選択の項目において、該当する利用者数が多いと思われる「東京」をデフォルトにするとよいでしょう。
応用:表示言語選択
プランを設ける
保険、引っ越し、健康診断など、複雑な組み合わせを考えなくてはいけないサービスでは、標準的なプランをいくつか用意し、そのなかで利用者の需要をおおむね満たすものを選んでもらうことで、選択することに伴う利用者のストレスを軽減できます。
応用:結婚式、パック旅行、Web制作
コース料理
食事の時間をゆっくりと楽しめるよう、コースを設けている飲食店はたくさんあります。さらにもう一歩踏み込んで、利用者の嗜好を読み取り「おまかせ」で料理を提供できると、利用者の満足度は高まります。
応用:お試しセット、個人指導塾
標準的な設定
スマートフォンなど多機能な機械では、利用に際して設定しなければならない項目がたくさんあります。あらかじめ標準的な設定を施し、必要であると思われるアプリケーションをインストールした状態で販売すると、利用開始時のハードルを下げることができます。またその状態を記憶しておき、いつでも再現できるようにしておくと、不調になった際に簡単に回復できるなど別のメリットも生まれます。
応用:CMSインストール済みサーバー

デフォルトの注意点

このようにデフォルトは多くの場面でサービスの提供者、利用者双方にメリットを与えます。しかし、利用者は選択肢が少ないよりも多いことを好むこともわかっています。たくさんのオプションを用意したうえで、考え抜かれたデフォルトを提供できると、ユーザー体験の向上が期待できます。

また多くの場合、デフォルトは最も選ばれる選択肢となるでしょう。不適切なデフォルト(利益率が低い、ユーザーメリットが少ないなど)は設けるべきではありません。

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