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氷河期世代のサポートについて考える

氷河期世代のサポートについて考える
前提となる事実
1993年から2004年の間に高校や大学を卒業した世代を「就職氷河期世代」といいます。2040年以降、氷河期世代が高齢者に差し掛かり、社会保障の増額や労働者人口の減少が危惧されています。

氷河期世代のサポートは必要

氷河期世代は、人口規模が大きい

2023年時点で、就職氷河期世代(以下、氷河期世代)は15歳未満のこども1435万人(参考01)より多く、およそ1700万人います(参考02)。内閣府の調査では、氷河期世代のうち正規雇用されているのは半数程度の916万人ほどで、対して非正規雇用者は371万人とされています(参考02)。また、正規雇用を希望しながら不本意に非正規雇用にとどまっている人が50万人いると考えられています(参考03)。氷河期世代は他の世代と比べて能力が劣っていた訳ではありません。学校を卒業して就職するタイミングと不景気とが重なり、企業の新卒採用数が少ないなかで、不運にも正規雇用で採用されなかった人が多いのです(参考04)。長年、性別による雇用機会や待遇の均等を目指す(女性の活躍を促す)動きは続いています。同様に、世代間格差の是正も積極的に行われるべきです。

労働力不足の解消につながる

氷河期世代へのサポートは、日本全体が抱える問題への対策であり、先行投資でもあります。日本は現在、最もサポートが必要な高齢者を支えるための労働人口が足りず、また年少人口の少なさから、将来さらに高齢者支援のための現役世代の負担が大きくなることが予想されます(参考05)。氷河期世代は、年少人口のように就労できるまで成長を待つ必要や、外国人労働者のように日本語学習などのサポートも必要ありません。すでに社会人経験のある人も多いことから、就労支援を行うだけで、即戦力となることを期待できます。

国全体の負担を軽減するために

国税庁の調査によると、2021年の非正規雇用者の年収は平均198万円、正規雇用者の平均年収は508万円と、正規雇用者は非正規雇用者の年収の約2.5倍であることが分かっています(参考06)。このままでは、非正規雇用者が多い氷河期世代が高齢者になったとき、既存の年金では賄えない高齢者の貧困問題(2040年問題)が発生します(参考07)。もっと早く手を打つべき問題でしたが、今からでも遅くありません。働ける、働く意志のある氷河期世代の就労を支援し、非正規雇用者の待遇を見直せば、将来的な社会全体の負担を軽減していくことにも直結するのです。

氷河期世代のサポートは不要

世代を限定しない就労支援が必要

日本では、2060年には1人の現役世代で1人の高齢者を支えなければいけないという試算が出ています。少子化対策によって出生率を回復させる政策を進めてはいますが、成果が見えてくるのは2110年ごろになる予想です(参考01)。そのため、並行して現時点での現役世代(生産年齢人口に当てはまる人)の収入を増やして、社会保障の財源に当てる対策は必須です。氷河期世代は1700万人と人口比率が高く、年齢的にも即戦力を期待できる側面もありますが、人口比率で言うならば、3627万人いる高齢者への就労支援も有効です(参考02)。また、氷河期世代に限定せず、子育て中の女性たちに向けた就労サポートを充実させることが、社会全体の生産力向上に即効性があります。非正規雇用に甘んじている、将来性もあり優秀な女性たちのために、出産や子育てに左右されずに働ける環境を整えることを優先させる方が、出生率の回復という長期的な課題にも直結する対策なのです。

すでに遅い

氷河期世代が新卒のタイミングで就職が難しかったことは事実ですが、それに対する支援を行うには遅すぎました。氷河期世代の枠組みに当てはまる人たちの年齢は、現在40代〜50代です。ところが一般的な求人は、30代前半までを対象に行われています。これは企業側が、新しい業務内容を吸収できる年齢として、30代前半が限界だと想定しているからです。また、通常40歳以上対象の求人では管理職を期待されることが多く、いくら社会人経験を積んできた氷河期世代でも、非正規雇用での経験しかない場合はそのポストに見合う人材ではないと判断される厳しい現実があります(参考03)(参考04)。

社会保障そのものの見直しを

氷河期世代のうち、正規雇用者はおよそ半数に留まっていることから、それ以外の500万人以上の人々が就労者全体の平均年収より少ない状況、あるいはさまざまな理由で無収入の状況にあります。そのため彼らが高齢者になった際に、受け取れる年金の受給額が低いか、あるいは受給できないことによる貧困問題が起こることが危惧されています(参考05)。どの世代もいつかは高齢者となる以上、高齢者への社会的な支援は必要です。しかし氷河期以降の世代であっても、今後の年金受給者は現役時代の雇用条件に関わらず、年金をあてにした老後の生計は立てられません。平均寿命(参考06)(参考07)や健康年齢を鑑みて年金の受給開始年齢の引き上げたり、そもそも特定の年齢や世代に限定することなく、さまざまな理由で働くこと、生活することが困難な状況の人を支えるシステムを大幅に組み直す時期に来ています。

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