電気自動車について考える
電気自動車を推進する
脱炭素社会の実現に寄与
電気自動車を推進する最大のメリットは、二酸化炭素排出量を大幅に削減できる点です。2020年の自動車の走行による二酸化炭素排出量は、日本全体の排出量の15.5%を占めており(参考01)、電気自動車へ移行することで大幅にそれを抑制することができます。また、自動車の製造から廃棄までの全工程で比較しても、電気自動車はガソリン車より20~30%も排出量を抑えられます(参考02)。つまり、脱炭素社会の実現に大きく貢献する手段なのです。
家計の負担を軽減
環境配慮の面から語られることの多い電気自動車ですが、ユーザーにとっては燃費の良さが何より魅力です。三菱自動車工業株式会社の試算によると、車を7年間保有した場合の電気料金(充電にかかる費用)は、ガソリン車における燃料費(170円/Lで計算)のおよそ3分の1程度で済みます(参考03)。電気自動車の本体価格は同モデルのガソリン車と比べて高額ですが、国あるいは自治体からの補助金やエコカー減税を受けられれば、最大で150万円近く優遇されることから(参考04)、ガソリン車やハイブリッド車と近い価格で購入できます。
非常電源としての役割
電気自動車の蓄電池は、非常電源としての役割も大いに期待できます。停電に際し、電気が復旧した地域まで車を走らせ充電して、家庭の電力をまかなえたという実例もあります(参考05)。また災害時以外でも、日常的に充電はピーク時を避けた電気料金の低い時間帯に行うことで、家計の負担を抑えられるだけでなく、地域全体の電力不足解消にも一役買うことができます(参考06)。
進むインフラ整備
電気自動車の普及には、もちろんインフラの整備が不可欠ですが、公共の充電スタンドの全体数はすでにガソリンスタンドに匹敵しています(参考07)(参考08)。さらに今後は、設置の規制が緩和されるため、短時間で充電できるスタンドの増設も見込め(参考09)、都市の公道での導入も進んでいます(参考10)。
参考資料
- 参考01「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」国土交通省
- 参考02「Let’s ゼロドラ!!(ゼロカーボン・ドライブ)」環境省
- 参考03「燃費も抑えられる!」三菱自動車工業株式会社
- 参考04「電気自動車、日産リーフ。補助金・優遇策」日産自動車株式会社
- 参考05「日産リーフとV2Hで2日半の停電を乗り切った」日産自動車株式会社
- 参考06「EV・PHEVの特質に関して/EV・PHEVの貢献の可能性に関して」経済産業省
- 参考07「都道府県別 充電設備補助金交付台数(合計)」一般社団法人次世代自動車振興センター
- 参考08「令和3年度末揮発油販売業者数及び給油所数の推移」経済産業省資源エネルギー庁
- 参考09「政府がEV急速充電器の規制緩和へ」FNNプライムオンライン
- 参考10「EV充電器の公道設置に関する実証実験」横浜市
電気自動車を推進しない
航続距離が短く、充電時間は長い
ガソリン車の航続距離(一度蓄えた燃料や電力だけで走れる距離)は500kmを超えるのに対して、多くの電気自動車の航続距離は200~400km程度です(参考01)。ゆえに、こまめな充電が欠かせません。しかし、数分で済む給油と違い、普通充電は最短で4時間、急速充電でも15~30分を要します(参考02)。また、「急速充電」できる公共の充電スタンドは、ガソリンスタンドの3分の1程度しか設置が進んでいない状況です(参考06)(参考07)。戸建てであれば、夜間に自宅での充電が可能ですが、共同住宅においては、自宅の駐車場に充電器が設置されているケースはほとんどありません。さらに、共同住宅で充電器を設置する場合、費用面では補助金を受けられるものの、電気自動車を所有していない住民から合意を得る難しさがあります(参考03)。
電力確保への不安
東京都知事は2022年、盛夏に向けた5月と、厳冬を控えた10月に、電力の逼迫に備える節電を呼びかけていました(参考04)(参考05)。2022年の国内の新車販売のうち、電気自動車の販売比率はわずか2.5%です(参考06)。電気自動車の普及が進めば、さらなる電力を確保する問題が浮上します。実際に、先行して電気自動車が普及しているアメリカのカリフォルニア州では、熱波で冷房の需要が増えた際に、住民に電気自動車の充電を控える要請を行いました(参考07)。
リチウムイオン電池の短所
電気自動車の心臓部であるリチウムイオン電池は、低温環境下ではパフォーマンスが低下します。具体的には、走行可能距離が短くなる、充電時間が延びるなどです。そのため、寒冷地での電気自動車の利用は現実的ではありません(参考08)。さらに、充放電を繰り返すと蓄電容量が減ってしまうのでパーフォーマンスを維持するためには交換が必要ですが、その費用は40万〜70万円と高額であり(参考09)、決して維持費用がリーズナブルだとは言いきれません。
参考資料
- 参考01「電気自動車の航続距離の目安は何km?」東京電力ホールディングス株式会社
- 参考02「充電設備について」経済産業省
- 参考03「電気自動車マンションで充電したい!EV充電の課題は?」NHK
- 参考04「小池都知事『電気契約見直しを』節電へ呼びかけ」日本経済新聞
- 参考05「『冬もエネルギー節約、HTTを』小池都知事が要請」日本経済新聞
- 参考06「自動車の【脱炭素化】のいま(前編)日本の戦略は?電気自動車はどのくらい売れている?」経済産業省資源エネルギー庁
- 参考07「米カリフォルニア州『EV充電制限を』電力逼迫懸念で」日本経済新聞
- 参考08「北国特有の課題」北海道EV・PHV普及促進検討研究会
- 参考09「電気自動車用バッテリーの寿命はいつ?交換や値段、仕組みについて解説」東京電力ホールディングス株式会社