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採用について考える

採用について考える
前提となる事実
世界的には「中途採用=通年採用」がスタンダードであるため、日本のような「新卒一括採用」はかなり少数派です。一方で、近年の日本の雇用形態は、海外にならい「終身雇用制度」では無くなりました。

新卒採用が良い

求職者の視点

新卒一括採用の場合、企業側が新入社員を教育する研修を実施することが多いため、社会人経験が無いことを否定的に評価されることはありません(参考01)。また企業側は、新卒で入社してくる社員について、組織に新しい風を吹き込んでくれるフレッシュな存在と捉え、むしろ未経験である点は歓迎されます。新卒の就活では、傑出した才能は埋没したり評価されないこともありますが、組織人として求められる意欲や協調性を高く評価してもらえる安心感があります。安心感といえば、同時期に入社した同世代の仲間が多くいる点は心強いだけでなく、その同期たちと切磋琢磨できる環境を得られることは中途採用にはないメリットです(参考02)。

企業の視点

企業にとって、社員の採用や教育にはたくさんのコストをかけています。採用だけでも、募集、面接、選考、内定と内定後のフォローなどに費用が発生し、2019年の新卒採用1人あたりの平均コストは、93万6千円でした(参考03)。高額に見えますが、中途採用の場合より10万円ほど安く、採用後の教育や研修も含めて、それらを一括して行える方が効率が良い(=トータルコストを抑えられる)というメリットがあります。また、組織で一定量は必要なジェネラリスト人材(幅広い分野の仕事についての知識やスキルを持っている人材)の育成と確保を行える点でも有用です。他には「求職者の視点」でもふれたように、まとまった人数の新卒者を採用することで、組織の若返りや活性化、年代別の人数構成を適正化できるのも大きな利点です。何より、一度も他社の色に染まっていない人材を確保することは、企業のビジョンや文化を浸透させ継承していくためには効率の良い方法なのです(参考02)。

社会全体の視点

日本のように、在学中に一斉に就職活動をスタートする「新卒一括採用」は海外ではあまり見らません。新卒一括採用システムによって、日本では大学在学中に8割以上の学生の就職が決まっていますが、アメリカや中国、韓国では在学中に就職先が決まっている学生はいずれも4割以上、5割未満でした(参考04)。さらに、日本国内では、2023年の4月1日時点で、同年3月に卒業した学生の就職率が97%以上でした(参考05)。このように、ほとんどの学生が就職できている状況は、失業率の低さを維持するだけでなく、就職後は年金や税金をきちんと納めてもらえるという点で社会全体の安定につながっていると言えます。

中途採用が良い

求職者の視点

中途採用の場合、自身の能力や経験をピンポイントでアピールできるため、どこに配属されるかわからない新卒一括採用よりも希望する職種(部署)を狙うことができます。また、一斉に就職活動する大量の人材の中から、まず大学名によって振り落とされ、人柄や印象などの曖昧な基準で選考される新卒採用と比べると、中途採用であれば自身が評価して欲しい個性が埋没してしまうようなストレスは少なくなるでしょう(参考01)。また、現在の新卒一括採用システムでは、就職活動の早期化と長期化によって、大学生活の4年間のうち、実に半分近くを就職活動に費やしており、結果的に学業を犠牲にしている側面も指摘されています。加えて、在学中に内定をもらえなかった学生が新卒者のカテゴリに留まるために就職浪人するケースも少なくありません(参考02)。

企業の視点

中途採用は新卒と比べて「即戦力」を期待できるので、会社にとってその時に必要な人材を必要なだけ獲得できます。また、社会人として必要な最低限の知識やスキルを教育するコストをかける必要もありません。その上、中途採用した人材からは、同業他社や異業種の経験を元に、組織内では気づけなかった新しい視点やノウハウを得ることも期待できます。何よりも、教育の難しいスペシャリスト人材(特定の分野において専門性の高い資格や技術、知見を持った人材)の確保は、実践的な経験値の低い新卒からの採用ではなく、中途採用でこそ実現できることです(参考03)。

社会全体の視点

新卒一括採用は、終身雇用と年功序列型賃金(昇給)とを前提として機能するシステムであり、日本でも1980年代までは有効でした。ところが、終身雇用の確約がない時代になり、新卒者は労働環境などの致命的な問題ではなく、ミスマッチを理由に早期離職する者も多く、企業がコストをかけて新人教育をしても無駄になっているケースも多く見られます(参考02)。中途採用には未経験者がキャリアをスタートしづらい側面はあっても、普及すれば、これまでは新卒者でなければ得られなかった正社員への道が、既卒者にも開かれることになります。超高齢社会において、人生のどのタイミングでも正規雇用されるチャンスが広がっている方が、意欲的に働ける人が増え、社会の安定に結びつくはずです。

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