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動物園について考える

動物園について考える
前提となる事実
日本には、日本動物園水族館協会に登録されているだけで、89の動物園と51の水族館があり(2024年1月時点)、登録されていない施設を含めるとそれ以上の数の動物園や水族館が存在しています。

動物園は必要

思い出を継承できる娯楽施設

動物園は、幅広い世代にとって公益性の高い施設です。人の生涯において動物園を訪れる機会は(諸説ありますが)、「子どもの頃」「成長して初めてのデートで」そして「親として子どもを連れて」の、3度あると言われています(参考01)。実際のアンケート調査でも、市民の多くは「一度は子どもや孫を動物園に連れていきたい」「子どもに本物の動物を見て驚き、学んで欲しい」と考えていることが分かりました。とくに高齢者にとっては、自身の子ども時代や子育て時代の思い出を振り返り、次世代(孫)とも新たな思い出を共有し、その体験の素晴らしさを継承できる場所でもあります。また、小さな子どもを気兼ねなく連れて行ける「公園」でもあることから子育て支援の一端も担っています。

教育施設としての必要性

持続可能な社会の構築や、地球環境を保全する人材の育成が求められている時代です。動物園は、体験として生物の多様性にふれ、環境保全に関心を持つための入口となる施設なのです。ふだんは目にすることのない動物たちを目の当たりにすることで、地球上の動物がどれほど多様であるかを直感的に知ることができます(参考02)。動物園では、子どもだけでなく、大人にもたくさんの気づきを得られます。例えば、環境破壊によってジャイアントパンダの生息地が失われているという事実がありますが、可愛いパンダの姿を実際に見たことがあるのとないのとではその後の行動に大きな違いが生まれます(参考03)。海外の動物園では、展示している動物の生息地の状況も伝えることで、直接その場で寄付を促すような動きもあります(参考04)。

「種の保存」への取り組み

動物園は、生物の多様性を周知するだけでなく、実際に絶滅危惧種を守る活動も行っています。絶滅の危機に瀕している野生動物の中には、個体数が極端に減少していたり、本来の生息地の環境が汚染されていたりして、生息地での保存と回復が困難な種がいます。そのような野生動物を、生息地から離れて保護増殖して、最終的には生息地に「野生復帰」させるための拠点となることも、動物園の役割なのです(参考05)。 実際に、生息地との連携によって野生復帰が実現したケースもあります。日本において、野生のコウノトリは1971年に絶滅しましたが、その翌年から東京都の多摩動物公園において飼育を開始し、1988年に初めて繁殖に成功しました。その後、飼育下で繁殖したコウノトリを兵庫県立コウノトリの郷公園で放鳥し、2007年には公園外での繁殖が確認されて、無事に野生復帰を果たしました(参考06)。他にも、ライチョウやツシマヤマネコの野生復帰を目指す取り組みが続いています(参考07)(参考08)。

動物園は不要

動物に優しくない

世界的に、動物が幸せに暮らせるように「動物福祉」の観点に基づき、野生動物本来の生態を反映させた(群れを作る動物であれば群れに近い形で飼育し、広いスペースや水場が必要ならばその環境が整った)展示施設が求められています(参考01)。日本でも、「行動展示」で知られる旭山動物園のように環境を整えている施設もありますが、他の動物園では「見世物小屋」と大差の無い展示も多く見られます(参考02)。その結果として、現在日本の動物園は新たにホッキョクグマを迎え入れることが許されていません。日本には、絶滅危惧種であるホッキョクグマの飼育に必要な飼育環境の国際基準(マニトバ基準)を満たせる施設がないためです。

人間にも優しくない

日本の動物園の7〜8割は自治体が運営しており、公費負担額は経費の半分以上を占めています(参考03)(参考04)。公営の限られた予算では、動物福祉を意識した環境を整えたくても、施設をリニューアルするための費用を工面できません。さらに人件費も削減されやすく、結果として飼育員の動物への想いに頼った「やりがい搾取」の職場となってしまう傾向があります。来園者にとっても、コンクリートで固められた展示施設や狭い檻の中で本来の姿を失っている動物を見ることになり、テーマパーク型の遊園地が充実する昨今、動物園は「安かろ悪かろ」の時代遅れの娯楽施設だと言えます(参考05)。

命の展示は必須か?

動物園の役割の1つに「教育/環境教育」が掲げられています。日本最初の動物園である上野動物園が開園した1882年ならば、本物のキリンやゾウを展示する意義はありました(参考06)。けれども大型動物の迫力は、博物館の骨格模型や標本でも伝わりますし、映像技術の進化した今ならば、等身大で映像を投影するなどして、その大きさや動きを実感できます。専門的な情報の入手も、1882年と比べると誰でも簡単にできるようになりました。確かに動物を知るには、あらゆる媒体を駆使したとしても現実の動物に触れる以上の体験はできません。しかし、例えば本来時速60kmで走れるキリンが(参考07)、その走っている姿を動物園では見られない以上、果たして野生動物のリアルな姿がそこにあると言えるでしょうか。また、本来母系家族の群れで生活するゾウは、動物園では適切な飼育環境を実現できず、野生のゾウよりも寿命が短いというデータもあります(参考08)。

繁殖の難しさ

ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)によって、野生動物を動物園に新たに迎えることは難しくなっています(参考02)。今では動物園の動物のほとんどは動物園生まれですが、繁殖の難しい種が希少になる一方で、繁殖しやすい種については増えすぎると処分の対象となり得ます(参考09)。近親交配を防ぐためにも、他の動物園などに引き取ってもらうシステムはありますが、繁殖しやすい種は引き取り先も見つかりにくく、「余剰動物」となり行き場を失ってしまうのです。

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